2010年8月28日土曜日

驚異の鉋 中惣

いま使っている荒削り用の
寸六鉋(身巾6cm)の刃が
だいぶ短くなったので
そろそろ新しいものをと
探していたのですが、ネット・オークションで
「中惣」銘の古い鉋を目にしました
古い鉋のことはあまり知らないのですが
この鉋は一見していい雰囲気が感じられたので
入札しておきました
オークション終了の日
他に誰も入札がなく数千円で落札


ということで、手許に届いた鉋がこれです
出品した方は、こういった古い道具を
専門にされているようで
古い鉋身を新しい台にすげ換えて
すぐ使えるようにしてありました


「中惣」という銘がなんとか判読できます


裏はベタ裏になっていたので
自分で透き直しました


鋼にグラインダーを当てて
火花を出してみましたが
炭素鋼系の火花が散りました

研ぎ角度は鉋では有り得ない21度に
研がれていましたが(通常は25~30度)
とりあえずそのままの角度で
研ぎ直しました

そして使ってみてびっくり
ギターの裏板の荒削りをしてみたのですが
切れ味よく、5mmほどの厚さの
硬いインド産ローズウッド(紫檀)を
2,5mm前後まで削っても
刃先はびくともしていないのです
しかも逆目もほぼ止まっている・・

いま使っている鉋に
これほど強靭で永切れする鉋は
燕鋼かハイス鋼のものくらいしかありません
おそるべし

削りの様子はYou Tube にUPしておきました




ローズウッドの荒削りをした後の状態ですが
やや刃先が細かく変形しているところがありますが
これは研ぎ角度が鋭利なのが原因だと思われます
ですが、まだまだ健在です


荒削りの鉋屑
刃先角度が鋭利なので
逆目にやや深く入り過ぎています




刃先だけ角度を27度ほどで研ぎ直し


今度はギターの響板の補強材に使う
パサパサのスプルースを削ってみました
荒削り用に調整した鉋台でも
これくらい削ることが出来ればOK

削り肌も美しい

9 件のコメント:

猫村 さんのコメント...

裏はベタ裏になっていたので
自分で透き直しました、と書かれておられますが、此はサンダーで擦られたのですか?
鉋は裏の鋼が薄いので普通は金床に当てて表から叩いて先の部分の鋼を裏側に少し折り曲げます。こうして研ぐと刃先だけが研げて、鋼が減りません。
また刃角が薄いのは食い込みやすくなります。
その意味で30度が刃も減りにくく、切れも長続きします。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

猫村さん、コメントありがとうございます。
通常はご指摘のように裏出しを行いますが
使い込まれた古い鉋でベタ裏の場合は
透き直すしかありませんね。
これはミニ・ルーターでやりましたが
今はディスク・グラインダーでやってます。
鋼の厚さも鉋によって様々で、
この中惣のように厚めのものは
裏の透き直しは充分に可能です。
刃角度については私もいろいろと試してきましたが
この中惣をみても分かるように
刃角度が21度でも充分永切れする鉋はあります。
やはり鋼の生まれ素性と、それを鍛えた
鍛冶匠の腕によって刃物の良し悪しは決まってきますね。
刃角度は二義的要素にしかすぎません。
私は今は軟材用は26度~27度、
堅木用は28度~30度で研いでいます。
粘りの強いメープル材などを削るには
刃角度が30度では切れが重く、仕事になりません。

猫村 さんのコメント...

切れ味研究では、刃の耐熱性が切れ味を決めると成っていました。
角度の問題もありますが、
研ぎ上げたところを拡大してみると、返りのこりが多いようで、このまま使うと折れて溝になり、抵抗を増すようです。
また溝にくずが詰まって広げるのが一番の問題だそうです。
私は皮砥で刃先をなめさせていますが、
かすかに丸い方が長く良く切れます。
近所の大工さんにもらった古い鉋はちびてもう殆ど刃が残っていませんが、角度は30度よりはるかに大きく、堅材でも軽く切れます。(一枚刃です)
逃げ角が大きいと切れ込みやすく、少ないと滑りやすいようで此処がまだ判っていません。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

裏の刃先の画像はたしかに良い状態ではありませんが、
それでも軽く切れるのですから
刃先の返りの状態は切れの軽さにはさほど関係しません。

1枚刃でしたら刃角度30度以上でも
ある程度軽く切れるのでしょうが
この動画のように逆目が入り乱れている
ローズウッドの逆目を止めるのは
一枚刃では不可能です。
深いカーリーメープルも同様ですね。
このような材を何時間も削るとなると
少しでも切れが軽い方が体への負担が少ないのは
経験のある人なら理解できることだと思います。

私は研ぎの最後に刃と直角方向に
刃先をハマグリ刃にしています。
動画参照下さい。3分48秒くらいから。
http://www.youtube.com/watch?v=sU_5II5UOXE

猫村 さんのコメント...

変わったことを書きますと、
ミクロサンプルを作る、ダイアモンド刃物は60度と45度で、45度の方が切れそうに見えますが、切れ込みすぎるので60度がよく使われます。

西洋カンナが入ってくる前は和製は1枚刃が多く最近は返し刃付きが多くなっていますが、うちは3割くらいが1枚刃です。

それと不思議に思うのは、うちらの方では、隅カンナが斜め型があり、左右要ります(楽器では使われないと思いますが)、此は角で手を切りやすく、不便です。
何処かの式では、撞木鮫みたいに下だけ端まで広がって両方の隅に使え、直角刃で1個で済みます。(組み付け方が判りません)

猫村 さんのコメント...

撞木鮫を見つけました。
五徳鉋と言うらしいです。
http://www2.odn.ne.jp/mandaraya/yasubei-gortoku.html

認証文字が読みづらくて・・

猫村 さんのコメント...

台仕込みを見つけました。
http://blogs.yahoo.co.jp/tsurikichi2001/33275636.html#33275636
道具屋さんで買うと8寸勾配が多く、
ほしい8.5寸勾配がありません。

今持っているスタンレーのブロックプレーナ 12-960 は 切れ刃角が12度ですが、普通材では食い込みすぎて、木口しか削れません。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

刃角度12度は木工用としては使えないでしょうね・・
13度も無理でした・・
http://kiyond.blogspot.jp/2014/01/blog-post_2.html

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

いろいろとご教示ありがとうございます。
精密な金属加工をやっている知人に
いろいろ話を聞きますが、ハイスのバイトも
刃角度以上に鋼の質が重要だと言ってました。
どうも国産のものは良くないようです。
これは鉋にも言えます。
これ以上言うと刃物鍛冶をやっている人に
失礼なので言いませんが、
小刀にしても軽い切れ味のものは
多少刃角度が高くても、いいかげんな研ぎでもよく軽く切れ、
刃先が白く磨耗してからも切れが止まないのも不思議に思います。
木工芸の名工、竹内碧外が使っていた
砥石や小刀を使わせてもらったことがありますが
小刀はまさにそのようなものでした。

楽器製作でも際鉋は使いますが
調整が厄介だなと使う度に思います。
五徳鉋は以前から興味がありますが
なかなか手が伸びません・・