2011年7月20日水曜日

寸六鉋4丁合わせ(削り比べ)

今日は19世紀ギター、ラプレヴォット・タイプ
裏板の接着面を仕上げました
この面を基準に裏板をヴァイオリンのような
膨らみの付いた形状に仕上げていきます

荒削りをする際に
寸六鉋4丁で削り比べを行いました
最初に「も作」銘の身幅60mmのもの
鋼は炭素鋼系、安来鋼・白紙と思われます
以前述べましたが、メープルのように
粘りの強い材を削るには、切れの軽い
炭素鋼の鉋を私は主に使います
この鉋は刃角度が28度ほどあるので
メープルを削るとやや重く感じます





次に「中惣」銘の身幅63mm、刃角度約26度
鋼は炭素鋼系のスウェーデン鋼と思われます
軽い切れで永切れします





これは初代・初弘、身幅65mm
刃角度は蛤(はまぐり)刃で約24度
鋼は炭素鋼系ですが種類は分かりません


手に入れた状態では
台に乾性油が沁み込ませてあり
それが硬化していた状態でしたが
その手触りがベタベタした感じで
使い難かったので、台を交換しました


これも軽い切れで永切れします
中惣と甲乙付け難い感じです



 これは上の2丁とほぼ同じ時代の鉋で
「来一郎」銘の身幅65mmのものです
鋼は安来鋼・青紙と思われます
この鉋も入手した時点では削り肌がザラつき
研ぎ上げた状態でも刃先に細かい欠けが
目立ったので、焼き戻しをしたものです
その後は調子よく、削り肌も美しくなりました




さて、これからは仕上削りですが
再び藤井刀匠作の玉鋼・寸八(身幅72mm)
登場してもらいました
昨日スプルースを削った状態で(参照
使い始めましたが、軽い切れで
驚くほど永切れします

ラプレヴォットの裏板は、外側が
不安定な形状をしているので
最後の仕上げは片手で鉋を持って
削らなければなりません
ですから、鉋がよく切れると大変助かるのです




このように摩耗し尽している感じなのですが
まだまだ切れは止んでいないのです
藤井鉋 おそるべし・・


これは藤井作玉鋼鉋と交互に
仕上削りに使った東郷鋼のものですが
研ぎ上げた状態から使ったにもかかわらず
早くもこのように刃先が摩耗してしまいました


仕上がった裏板の接着面



11 件のコメント:

halu さんのコメント...

教えていただいた刃の焼き戻しをやってみました。
堅い材料を削ると小さく刃こぼれしていた初弘が別物のようになりました。
これなら安心して使えます。
ありがとうございます。

匿名 さんのコメント...

http://videotopics.yahoo.co.jp/videolist/official/others/p122d116e8701e94a9f4f044a1de40ff5

ヤフ^のニュースに載ってました。
回路切り替えスピードとうまくシンクロしたんでしょうね。
最近流行のLED電球もデジカメとか携帯のカメラで見ると点滅するように見えるのは要注意です。
テレビなどのコントローラーの赤外線発光体部分をデジカメで見ると、裸眼では何も見えないのに、白く光るのがわかります。故障あるいは電池交換時期の簡易点検に使えます。
          源 信正

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

haluさん
焼き戻しがうまくいったようで、良かったです。
初弘の鋼は炭素鋼系ですか、青紙ですか?

こちらも昨日、古い鉋身の焼き入れと焼き戻しを行いました。
鋼は青紙のようでしたが、鋼が甘すぎだったので
これも思い切って敢行しました。
できるだけ低めの温度で焼き入れしたつもりですが
一度目の焼き戻しがうまくいきませんでした。
そういうことなので、二度目はやや温度を高めにし
鉋身をアイロン全体に乗せて行いました。
時間は2時間。
http://kiyond.blogspot.com/2011/06/blog-post_20.html
画像追加しました。
これでなんとかうまくいったようです。
焼き入れをし直したら鋼が冴え、地鉄にも地沸が付きました。
そして、鋼と地鉄の境目に刃文のようなものが現れ、
長い銀筋が二本出たのです。
まるで刀のようです・・
鉋身でもこんなことがあるのですね・・

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

信正さん
動画見ました。
これはおもしろいですね。
原理はよくわかりませんが、そのうち異次元との交流が
出来たりして・・エジソンもびっくり。

匿名 さんのコメント...

2度目の焼入れの鉋、もしかして、映り?
いただいた砥石で古刀をかけると、映りが出始めました。
ありがとうございました。
キヨンドさんに、いい砥石で磨がれて、刃物たちの喜びの声が聞こえるようです。
          源 信正

halu さんのコメント...

火花を見るかぎり炭素鋼のようです。
研いだ感じもかなり変わったような気がします。
鋼も冴えが出てきたように思えます。
とっても美人になりました。
本当にこんなことでこんなに良くなるのかとびっくりです。
道具に対する知識や技術を身に付けなければと痛感いたしました。

一般に炭素鋼は堅木には不向きといわれていますが本当のところはどうなんでしょうね?
炭素鋼の切れ味のよさは歳を取ればとるほどありがたいです。
特殊鋼は刃持ちが良いと感じますが重たい感じがして手が伸びにくくなってきました。
しかし、世の中には使ってみたい刃物がいっぱい。
お小遣いの続く限り止められません。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

銀筋は鋼と地鉄の境目に出ているので、映りではありませんが
地沸ははっきり確認できます。
地鉄には焼き入れをやり直す前には見えなかった肌も
くっきりと現れました。
鉄というものはほんとうに不思議です・・

haluさん、
こちらにある2丁の炭素鋼・初弘も切れ味よく永切れします。
それから、こちらで使っている炭素鋼の「も作」は
名古屋の青山鉋さんが、この鉋だったら堅木でもいけると思う、
ということで薦めてくれたものです。
寸六、寸四、小鉋と4丁お世話になりましたが、
今でも主力としてがんばってくれています。

また、炭素鋼系の「中惣」鉋も、インド産のローズウッド
くらいならば、普通に削ることができ、しかも永切れします。
http://kiyond.blogspot.com/2010/08/blog-post_28.html
ですから、一般的に言われているように、炭素鋼は堅木には
向かないとか、青紙の方が永切れするというのは
どのような鉋でどんな木を削った結果なのか知りたいところです。

そういう訳なので、こちらの主力鉋には青紙鋼のものはありません。
先般手に入れた初代・金井は別格で、これはこれから
いろいろ試したいと思っています。
きのう、試しに粉末ハイスの寸六でメープルを荒削りしたら
あっという間に切れが止んでしまいました・・

匿名 さんのコメント...

日立金属のSLD-MAGICって有機物と反応してすべりが良くなり、切れ味抜群らしいよ。
どこかでこれで刃物を作っていないのかな。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

コメントありがとうございます。
鉋か小刀、ぜひ試してみたいですね。

匿名 さんのコメント...

 日立金属さんといえば中国地方の島根県安来市にある冶金研究所が有名ですね。
なにやら電気製鋼所を国産初で松江市に立ち上げた歴史があるようですね。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

日立金属に長年勤めていた方が、退職後関西方面へ引越しされてきたという情報を得ました。
なんとか面識ができれば・・と淡い期待を抱いているところです・・