2014年1月19日日曜日

山口県岩国産 杭名砥を入手 

山口県岩国産の杭名砥という
仕上砥石を手に入れました
お世話になったのは
地元の刃物工房藤本さん
画像下の左2本は白巣板蓮華
上の2本は戸前・浅黄と
いったところでしょうか
右は赤ピン系で粒度粗めです

裏の様子

側の様子

白巣板蓮華はほとんどが
巣無しなのだそうです
京都の奥ノ門産白巣板や
梅ヶ畑の菖蒲や奥殿産とよく似ていて
紛れてしまうと見分けは
付かないでしょう

これは戸前・浅黄のやや粗い方です

試し研ぎの様子を
左端は中研ぎに使った
京都亀岡産と思われる青砥
やや黄色がかった珍しいものです
その右の6丁は杭名砥で
動画では上の左端から右に
下の左から右にという順で
使っていきました
仕上砥は動画撮影の前に砥ぎ面が
同じ条件になるように
写真に写っている黒名倉で表面を
擦っておきました

中研ぎに使った青砥(粒度約#1000)


やや柔らかめで強い研磨力があります

研ぎ上がりは緻密で、針気もありません

仕上砥ぎに使った赤ピン系の杭名砥
この手のものは採掘されていた当時
人気があったそうです

ザクザクと心地よく研ぐことができます

粒度は粗く、仕上砥というよりも
中砥といった感じです
家庭用の包丁などを砥ぐのに
威力を発揮したものと思われます

次は白巣板蓮華のやや柔らかめのもの

砥いだ感じは梅ヶ畑の奥殿産の
シャリシャリとした手応えと
菖蒲産のような滑らかさを
併せ持ったような感じです
これは東物と言われれば
納得してしまいます

地鉄にやや砥ぎ傷が確認できますが
鋼は光るほどに研ぎ上がっています
これで充分仕事で使えるレベルです

刃先の拡大画像(約100倍)
砥ぎ傷が浅く、刃先はほぼ傷が消えています
このように研ぎ上がるものは梅ヶ畑の中にも
そうは見られないと思います

次は同じ蓮華巣板でやや硬めのもの

真っ黒な砥ぎ汁が出ます

地鉄に所々細かい針気が見られます

刃先の拡大画像(約100倍)
針気は鋼にも及んでいますが
刃先では消えているのでそれほど
深さはないようです
これも文句なく研ぎ上がっています
このレベルで研ぎ上がるのは
東物(梅ヶ畑産)では
菖蒲産の優れたものか、巣板以外では
中山産の優れたものくらいでしょう・・
まったく驚きます

次は硬めの浅黄

硬い割にはよく反応しますが
粒度が粗い手応えを感じます

やはり地鉄にも粗い傷が付いています

鋼の傷は想像していたよりは細かい感じです

最後に、これはかなり硬めの浅黄ですが

反応は鈍いものの
これも研ぎ感に粗さを感じます

研ぎ上がりは一見ピカリと光っているようですが

刃先の拡大画像(約100倍)
拡大してみると
鋼全体に粗めの傷が深く付いています
粒度は細かいのでしょうが微粒の粒が硬く
鋼に深く傷が付いているのかもしれません

そうすると、今回の中では
白巣板蓮華の2丁が研ぎやすく
しかも研ぎ上がりも優れている
ということが言えると思います
私としては仕事で使うには
最初に使った白巣板のやや柔らかめのもの
ということになりそうです

砥いだ鉋は広島の刃物鍛冶
石社いしこそさん作の寸八(炭素鋼系)


後日、手に入れた蓮華巣板



2014年1月18日土曜日

世の中いろんな人がいるもので・・


私は楽器を作るのが専門ですが
刃物や砥石に関する問い合わせも多く寄せられます
ある時、砥ぎを始めたばかりで
できれば天然砥石を使いたいという人から電話がかかってきた
それで、どういう砥石を揃えたらいいのかアドバイスをしてくれという
最初はこちらも丁寧に答えていたが
その後頻繁に電話が
かかってくるようになり
厚かましい要求をしてくるように
なってきた

こちらは砥ぎで生計を
立てている訳ではないが
一応木工に関しては砥ぎを
含めてプロである
その人間に対してタダで
教えてもらおうという根性が
まず間違っている、ということに
当の本人は気付いていない
良い砥石を手っ取り早く
そして安く手に入れたいらしいが
そのケチな根性をまず直さなければ
良い砥石とは出会えないし
砥ぎも上達しない

こちらはこれまで山のように
砥石を手に入れて
その中から自分に合った
砥石を選んできたのです
中には示された価格よりも
上乗せした金額で
手に入れたものも多くある
そうして身に付けた
砥ぎのノウハウを
HP、ブログ、YouTubeで
紹介しているわけであります
ですから、それに対する質問などはコメント欄でお願いします
そうすることで、できるだけ多くの方と共有することができ
有意義なことにもなります

それ以外に詳しく
問い合わせをしたい方
とくに電話での問い合わせは
こちらの時間を
拘束するわけですから
上に書いたことをご理解頂き
ケチな根性だけは捨てて問い合わせて頂きたい

以上、ご理解の程
宜しくお願い申し上げます


2014年1月12日日曜日

千代鶴銘寸八と昭豊銘寸八鉋 削り比べ

佐野勝二と思われる千代鶴銘寸八鉋と
佐野勝二作・昭豊銘寸八を使って削り比べをやってみました
削った材は堅めで深い杢のCurly Mapleカーリー・メープル
通常の鉋でしたらすぐに刃先が磨耗するガンコな材です
これをできるだけ厚く削って逆目を止めるという
通常の仕事で使うやり方で削ってみようと思います
動画で最初に使ったのは右の昭豊銘・寸八










こちらは昭豊銘・寸八
薄板削り用として砥いでいたので
やや削り幅が狭くなっています


削り肌に艶があり、逆目もきれいに止まっています


刃先はほとんど変化はありません
左端の刃先が白いのは砥ぎが不十分なためです



こちらは千代鶴銘・寸八
動画の音からも判断できると思いますが
昭豊銘よりは削りに粘りがある感じです


こちらも艶のある削り肌で、逆目も止まっています


刃先も変化なく、かなり強靭な刃です
佐野勝二作と言っても過言ではないでしょう


2014年1月11日土曜日

佐野勝二作と思われる千代鶴銘鉋の台を修復

台もかなり使い込まれて悪い状態ですが
何とか修復してみました




台頭は金槌で叩かれグサグサの状態なので




5mmほど切り落としました


木口の割れやヒビを瞬間接着剤で補修


全体に鉋をかけ汚れを除去


虫食いの痕もついでに補修


押金(裏金)の押さえ棒も新しくしました(釘を使用)


刃口を狭くし、木っ端返しをもう少し厚くするため
樫材の薄板を瞬間接着剤で貼り付けました
埋木をしなくても、これで充分いけます


出来上がりました
台は尻も5mmほど切り落としたので
全体で1cm短くなりましたが
まだまだ充分な長さがあります(約32cm)
右は同じ佐野勝二作の昭豊銘寸八






刃口はできるだけ狭い方が逆目を止めやすくなります


身の仕込みはどちらも八分勾配くらいですね


はがねと地鉄じがねの鍛接の様子
上が千代鶴銘寸八で下は昭豊銘寸八
刃先はどちらも試し削りを行った後の状態です


地鉄の銑で削られた跡や
身の厚み具合などよく似た感じです
右が千代鶴銘寸八で左は昭豊銘寸八