2023年1月23日月曜日

匠家必用記中之巻から一章と二章の 読み下しを紹介

立石定準記
匠家必用記中之巻 
から一章と二章の
読み下しを紹介
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一 陰陽の二神八尋の宮殿を化立(たて)給ふ事

夫天地開闢のはじめ、高天原にまします神の御名を天御中主尊(みこと)と申奉る。今の伊勢外宮豊受神是也。天地開闢の始より今にいたる迄、国にとこしなへにまします故、国常立尊と申奉る。是天神初代の御神也。次に二代、三代、と相続し給ひて七代目の御神を伊弉諾(いざなぎ)尊、伊弉冉(いざなみ)尊と申奉る。天神此二神に詔し給ふは豊芦原の瑞穂の国あり。汝往て知領し給へとて、天瓊矛(あまのぬぼこ)を賜ふ。二神天の浮橋の上に座(まし)て、一心を起し戈(ほこ)をさしおろして、国をもとめ給ひしかば、滄海(あをうなばら)を得給ひき。引あげ給ふとき、矛のさきよりしたたり落る潮コリて一つの嶋となり。是をおのころ嶋と云。おのころ嶋はおのづからコリといふ義也。二神此嶋に天降り給ひて国中の天御柱を立、八尋の宮殿を化立給ふ也。此宮殿は天の瓊矛の御徳によって化立宮殿なり。これ神代天宮のはじめ也。はつは神道に愛する数、神徳八方へ布(しく)を称する義也。尋は手をのべ、尋どって宮の大さをきはめ給ふ也。上にもいふごとく是手量(てはかり)といふ。又は手尋ともいへり。ひとの長にてはかる、是をたかはかりと云。今の鴨居の高さ五尺七八寸にするは根元たかばかりより出たることなり。則此宮殿にましまして、天道万化を施し、日月山海土金水火草木等の神を化生し(あれまし)給ふ。


二 天照大神磐窟(いわや)に幽居(こもり)給ふ事

伊弉諾尊、伊弉冉尊国土を化生し(あれまし)給て後、天照大神、月読尊を生せり。次に素戔嗚尊を産み給ふ。然に素戔嗚尊悪行日々にさかんなる故、天照大神の御いかり甚し。もはや対面すまじと、の給ひて天下の政を捨て、天の磐窟に幽居(こもり)ましましぬ時に六合(くにのうち)常闇にして昼夜のわかち


なく「常闇とは天照大神磐窟へ入給ふゆえに、守護なく村に長なきがごとくにして安心ならざるをいふ」。此故に八百万神愁給ひ、天の高市に会集して太神(おんがみ)を磐窟より出し奉らんことを談合評議し給ふ。ときに思兼命遠く慮(おもんぱかる)。天糠戸命をして日像(ひのみかた)の鏡を鋳さしむ「天糠戸命は鋳物師の祖神也」。長白羽の神は和幣(にぎて)を造らしめ、天棚機(たなばた)姫命は神衣(かんぞ)を織て和衣(にごたえ)を造らしむ「今婦人の尊崇奉る機神は是也」。櫛明玉命は御統(みすまる)の玉を造しめ、天目一箇命(あまのまひとつのみこと)は剱(つるぎ)、斧、及もろもろの刃物を造り給ふ「是鍛冶の祖神也。播磨(はりま)の国多賀郡に御鎮座有。俗説に管相丞(菅原道真のこと)を祭り、或は稲荷を祭るはあやまり也。二神ともに鍛冶を祖神にあらず」。手置帆負命(たおきほおいのみこと)、彦狭知命二神は斎斧(いんおの)、斎鋤(いんすき)、天御量を以て「斎斧は今いふまさかり也。斎鋤はすき鍬也。天御量は番匠道具の名也。大小長短をはかりて宜に用る故はかりと云」山へ入、材木を伐出し瑞殿(みずのみあらか)を造り給ふ「瑞はみづみづ敷清浄の儀、殿(みあらか)御在家也」。手置帆負命、彦狭知命、番匠の道を始給ふとは伊弉諾尊伊弉冉尊国中に天御柱を化立給ふ御神徳かんじ給ひて番匠の道の基本をひらき給ふ也」。天鈿女神楽(かぐら)を奏して舞給ふ。天児屋根命、天太玉命はともに祈祷まさしむ。ときに太神(おんかみ)岩戸をほそめにあけ御覧じ給ふ。故にめでたいと云言葉、此ときよりぞ始る也。天手力雄命は磐窟の側に侍りて終(つい)に岩戸を引啓(ひらき)、太神の御手をとりて引

出し奉り、右の新殿にうつし奉る。櫛磐間戸命、豊磐間戸命は殿門を警護して人の出入を禁じ給ふに、此故に今神社の門に此二神を安置するの謂也。終に太神の御心とけて万民安堵の思ひをなし。常闇の雲はれたる心地して、人の面(おもて)もしろじろと見ゆる故。おもしろといふことは此ときよりぞ始る也。よって罪を素戔嗚尊によせて根国へ遂(やらひ)給ふ。此故に天照太神天下を御(しろしめ)し給ふこともとのごとし。此とき尊貴の神々は宮殿造り居住し給ひ、万民貧ものは山に往来して岩穴に住とかや「今諸国にある岩穴は神代に人の住みし後也。俗説に上古(むかし)は火の雨ふりし故に穴居するといふは誤り也」。此頃、手置帆負命、彦狭知命専宮殿及屋宅を造り給ふ故に、後には穴をすて家に住事になりぬ。此故に諸人此二神の恩頼(みたまふゑ)を蒙らずといふことなし。

 

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