2016年8月2日火曜日

工房の様子 古い琵琶の修復 天神を作り換える

以下、古い琵琶の修復の様子
四絃琵琶を五絃にするため天神を作り換える















ここからは海老尾の加工

天水さんが鍛えてくれた生反り小刀(参照


これは以前から使っている生反り彫刻刀(参照









2016年8月1日月曜日

天水さんの新作小刀

土佐(高知県)の刃物鍛冶
天水Takamiさんの新作小刀が2本届きました
画像右の2本
左端はいま主力で使っているもので
鋼Haganeは安来鋼・白紙1号

中央の、添え銘に「緑紙」と切られているのは
安来(ヤスキ)鋼の緑紙という鋼が
使われているそうです

岩崎航介著「刃物の見方」では
緑紙4号と5号が紹介されていますが
4号が炭素分0.7%~0.8%
5号は炭素分0.6%~0.7%となっています
今回の試作品はどちらか分からないということですが
0.7%としても白紙1号の約半分の炭素量ということになります
切れ味軽いです
これまで経験した天水さんの小刀のなかでは
トップクラスですね

さっそく仕事で使ってみました
削っているのはやや堅めの桑材の木口
桑材の木口は堅く、粘りも強いので
小刀の試し削りには向いているかもしれません

この小刀は上の画像右端のもので

添え銘に「積鋼」と刻まれています
天水さんによると6種類の鋼Haganeを
積層にした鋼だということです
切れは緑紙に比べるとやや重さを感じます
ですが、これまで使ってきた天水さんの小刀と
比べると、かなり優れていると感じます


そしてヤスキ鋼・緑紙が使われたもの

サクサクと軽く削ることができ
コントロール性も優れています
このレベルでしたら文句なしです


これは主力で使っている
ヤスキ鋼白紙1号が使われたもの

上の積層鋼とよく似た印象を受けます

小刀は現在の市販品には切れの軽いものが少ないのですが
昔の刀などを小刀として使ったりすると
時々驚くように軽い切れのものがあるのですね
しかも刃先の持ちもいい
日本刀の多くは折り返し鍛錬されているので
炭素分は少ないものが多い(0.5%前後)のも一因かな
と思われます・・

参考までに
これは宮大工の故・西岡常一氏が
「法隆寺を支えた木」という著書のなかで
述べておられる箇所ですが
初めて作ってもらった槍鉋・ヤリガンナがよく切れず
その後、法隆寺に使われていた和釘と
日本カミソリの鋼(おそらく玉鋼と思われます)を
使って作ったものでうまくいった
と、いうことが書かれてあります

このときにヤリガンナを鍛えたのが刀匠だった
というのが興味深いところで
和釘と玉鋼を使って刀を鍛えるということは
古来から行われているようで
江戸時代初めの刀工、長曽禰虎徹も
兜や古釘など、古い鉄を溶かして刀を作り
そのことを自分の銘にして古鉄入道と
名乗っていたとされています

また現代でも和釘など古い鉄は
刀工に好んで使われているようで
動画で刀を鍛錬しているのは故人となられた
杉田義昭氏です
氏は通常の焼き入れとは違ったやり方で刃文を出す
独創的な刀匠でした

また、手持ちの小刀のなかで切れ味が良いのは
すべて刀匠が鍛えたもの
というのも興味深いところです
 

これも参考として
古代の和釘とその他の鉄の成分分析表で
Cが炭素分、Si・ケイ素、Mn・マンガン、P・燐(リン)
S・硫黄(イオウ)、Ti・チタン、Ni・ニッケル、Cu・銅です

こちらは古墳時代の直刀の成分分析表

2016年7月28日木曜日

江戸時代の図絵 砥石 漆関連

こちらのHPの天然砥石について
紹介している和漢三才図絵の砥石に関する図の
大きな画像が必要と思われましたので
ここで紹介しておきます
別タブあるいは別ウンドウで開くと
大きな画像を見ることができます


以下は、漆に関する江戸時代の図絵
これは江戸時代の初め頃(1600年代)
海北友雪によって描かれた蒔絵師の絵
「職人絵尽」から部分転載

同じく漆細工師


こちらも江戸時代初期に描かれた
喜多院職人尽絵から蒔絵師(部分転載)


これは江戸時代の始め頃、元禄三年(1690年)に
発刊された「人倫訓蒙図彙Jinrin kunmou zu i」から
「漆掻」の図
説明は「漆はよしの(吉野)を名物とす。
其外、諸国にあり。是も山賊Yamakatsuの
業Wazaとして木を植えてこれを取るなり」

同じく漆屋の図と説明
説明は「諸Moromoroのこし漆(濾し漆)あり
並Narabini砥粉Tonokoをも商う
所々にあり」


これは江戸時代の中頃
宝暦四年(1754年)に発行された
「日本名物図絵 」から漆製法の図

「漆の木に鎌にて切目をつくれば 
其切目より汁ふき出るを竹べらにてこそげ取也
こそげ入れるうつわ物に茶の濃きせんし汁を入
くるみの油を加えて其上へ漆をこそげいるれば
漆やけずしてよしといへり
元漆を取には蒸て ほそき木は汁なし
又格別の老木もわるし
和州吉野 紀州熊野 うるしの名所也
其外締玉より出うるしの木の実は取て蝋にする也」


こちらは江戸時代の始め頃、貞享二年(1681年)に
発行された「歌合・職人絵尽くし」から塗師の図
「よ(良)げに候Soruou きがき(生掻)の うるし(漆)げに候
今すこし火ど(取)るべきか」

歌合Utaawaseは
「左・いつまでか はまくりばなる こがたなの 
あふへきことの かなわさるらむ」 

いつまでか 蛤刃なる 小刀の
会うべきことの 叶わざるらん

「右・しほれとも あふらかちなる
ふるうるし ひることもなき そてをみせはや」

絞れども 油がちなる
古漆 振ることもなき 袖を見せばや

判定・「左右ともにこころ(心)ことば(言葉)き(利)きて
をもしろくき(聞)こゆ 
よき持(もち)にこそ侍る(はべる)めれ(引き分け)」 


同じく箔打師(金箔を作る)の図
「なんりやう(何両?)にて うちいで(打出)わろ(悪)き」

歌合は、「左・はいらうの たらさりけるか
我に人 とろほされしと おもいあはねば」
配料の 足らざりけるか
我に人 とろほ(泥棒?)されしと おもい会わねば

「右・こひすとて あをみはてたる ひたちかね
いつ色よしと 人に見えまし」
恋すとて 青味果てたる ひたち金
いつ色よしと 人に見えまし

判定・「左右ともに歌さまいやしく 又
逸興侍らす(はべらず) 可為持(持となすべく・引き分け)」
 

これは、かいすり(貝磨り師)の図
「このたち(太刀)のさや(鞘)は 
ばくたい(莫大)のかい(貝)が入べき」

歌合は、「左・したへとも われをは 人の日にそへて
うとくなし地の たえまがちのみ」
慕えども 我をば 人の日に添えて
疎く梨地の 絶えま勝ちのみ

「右・色にいて々 人にこ々ろを くたきかひ
あをさめはつる 恋もするかな」
色に出でて 人に心を 砕き貝
青褪め果つる 恋もするかな

判定・「左はこと(事)もなくよろし
右はまことに恋する人のおもかけ(面影)
うかひ(浮び)たり なをかつ(勝)べくや(右の勝)」


まきえし(蒔絵師)の図
「此たらい(盥)は いかけ(沃懸)地にせよと仰らる々
手間はよもいらじ」

歌合は「左・いかけ地の ところどころのきりかねの
ひかりことなる あきのよの月」
沃懸地の 所々の切り金の
光殊なる 秋の夜の月

「右・あきはけに さすかなりける かひかたな
さやかに月の ひかりさしつ々」
秋はげに 流石なりける 貝刀
鞘かに月の 光射しつつ

判定・左右ともに月の光りとよ(読)める
なを(尚)右は句こと(毎)に一首の
こ々ろ(心)いひ(言い)あらは(表)して
さすが(流石)す(捨)てがたし
(よって右の)為勝(勝ちとなす)