2012年3月6日火曜日

ポルトガル・ギターのブリッジ

今日はポルトガル・ギター奏者の
湯浅隆氏の依頼で、氏が使っている二台の
楽器のブリッジ調整を行いました
湯浅氏との付き合いも長く
もうかれこれ20年以上になるのでしょうか・・
その間、考えてみれば二台の楽器のブリッジを
同時に調整するというのは
初めてのことと記憶しています

これは拙作の楽器のブリッジ
下がこれまで使っていたもので
上が新たに作ったもの
材質はどちらも牛骨です
今回は弦高をやや高めにするために
作り換えたのですが
この楽器はやや派手に鳴り過ぎるので
ブリッジを厚めにし、肉付けも変えてみました

結果、音が太くなり、派手な鳴り方も
かなり抑えられました
楽器を受け取りに来た湯浅氏も同じ感想でした
因みにこのフレッティングは
ヴァロッティ&ヤング音律(参照
 
こちらはポルトガルの名工の楽器
こちらは上の楽器とは逆に音が太く
鳴り方がやや重い感じなので
以前のブリッジを削り
肉付けを少なくしてみました
弾いた湯浅氏の感想は
元気ハツラツになった、というものでした

以上、二例のブリッジの肉付けの変化は、これまでの経験で、ちょっと削ったり、厚くしたくらいでは音質には影響はなく、見た目でもかなり違ったなというくらいの変化がなければ影響は及びません。ここのところはヘーゲル同様のことを述べていて、質が変化するためには、ある程度の量の変化が及ばなければならないとして、私の記憶に間違いがなければ、馬の斑(まだら)模様のたとえ話が続きます。馬の斑は違った色の毛の集まりですが、これが1本や2本では斑に見えず、人間の目で見て斑に見えるにはある程度の本数(量)が必要である、というようなことが述べられているのです。このことは楽器を作る際にも重要なことで、たとえば、楽器の構造について顕微鏡レベルで語ることはあまり意味がなく、それを作ったり、弾いたりする人のレベルで見るものなのです。
ここのところを見失うと、とんでもない方向に行ってしまい、居場所を見失ってしまうのですね。
ですから、楽器を作ったり弾いたりする人によって判断は様々あるわけで、それでいいのです。
ただ、それを客観的に知ることも大切なことで、ギター製作の名工・ロマニロスも20年ほど前にそのことに言及しているのを知ったことがあります。


2012年3月5日月曜日

平家琵琶の海老尾の輪郭を仕上げる

製作中の平絵琵琶
海老尾の輪郭が出来上がりました
この後、転手(糸巻き)を差し込む穴を開け
糸倉を切り抜き、最終仕上げを行います






平家琵琶の海老尾をレザーソーで挽く

製作中の平家琵琶の海老尾を
替刃式レザーソーで挽いてみました

先日、近所のホームセンターで購入したものです
これまで、替刃式の鋸は刃渡り265mmの
挽き切り鋸や150mmの導突鋸は使っていましたが
このサイズ(180mm)の両刃鋸は初めて使いました



古事類苑のカリンと花梨

古事類苑から
バラ科のカリンとマメ科の花梨の記載
を紹介しておきます
右クリックで別ウィンドウで開くと
大きな画像を見ることができます

製作中の平家琵琶の撥面の絵は
カリンの実を幼少の義仲(木曽義仲)
もぎ取っているところにしようかなと思っています
そこで、カリン酒などを作る
大きな実の生るバラ科のカリンが
義仲の時代(平安時代末)に日本にあったのか
知りたいところなのですが
日本に入って来たのは不明のようです
原産は中国東部(参照)とされているようです

Wikipediaでは中国では木瓜と書くとされていますが
それは日本の木瓜とは違うようです
日本の木瓜(ぼけ)は古事類苑では
真の木瓜は享保年間(江戸時代中期)
日本に渡って来たとされ、カリンとは区別されています

2012年3月4日日曜日

タイトボンドでベニヤ焼き付け

長勝鋸さんに注文している
特注導突鋸を試し挽きするための
ギター・ネックのサンプルに、試みとして
タイトボンドでベニヤを焼きつけてみました

普段は膠・ニカワでやっていますが
タイトボンドの方が焼き付けするのは容易ですね
ただ、沁み出てきて付着したボンドの除去が
容易ではありません




膠は除去が容易なのです
以前、メープルのベニヤをタイトボンドで
試したことがありますが
メープルは緻密なのではほとんど沁み出てこず
問題ありませんでした




濃い色のベニヤだったら
色が濃いタイトボンドの方が
いいのかもしれません
これはまたいつか試したいところです

新作・端材オブジェ2点


2012年3月3日土曜日

平家琵琶の腹板を接着


製作中の平家琵琶
腹板を膠・ニカワで接着


上の画像は膠が下に
垂れてもいいように
新聞紙を敷いていますが
その下はこのように4点で固定しています




参考までに
これは500年ほど前の
平家琵琶ですが
接着部はすべて膠が
使われていました
内部の書付により
安永十年(1781年)
修復されていますので
オリジナルの接着剤は分かりませんが
おそらく膠が
使われていたので
修復の際にも膠を使ったものと思われます
八音抄でも
にかわ付きの面(接着面)は四分(約1.2cm)に弱きほど
内の深さは五分(約1.5cm)にいきたる程
少し撓たわみかかりたるやうに得るべし
と説明されています

現在の琵琶製作では
ソクイ使われるようです

平家琵琶の腹板に堰を接着

製作中の平家琵琶、堰を接着
ピノッキオの鼻のよう・・
この鼻は腹板を槽に接着する際に
槽の底に当たる長さにカットされます
この時やや長めにカットし
腹板を接着したときに鼻のところで
緊張感を持たせるようにします
擦弦楽器の魂柱のようなものですかね・・



八音抄の堰に関する記述

堰を置くこと 撥面参照の中すみの程あるべし。中すみより上へ寄るべからず。二に取らば下へ寄るべし。広き方はしもと云う堰の下がり上がりによりて、声の良し悪しは未だ探り出ださず。堰は板返し固からず、又柔らかならず。木の少し勇めきたらむ良し。堰に別の柱を立たさまにしたるあり。さあるべしとも覚えず。良き物どものは、別の柱をす。ただ刻み残したる長さ二寸(約6cm)ばかりも一寸四・五分(約4,2~4,5cm)もありげなり。すべて甲・腹の木少しおくれたらば堰は太くもこはらか心ざすべし。甲・腹固くしやう過ぎたらば、くつろかにすべし。

2012年3月1日木曜日

平家琵琶の半月と陰月を仕上げる

製作中の平家琵琶
半月(目)と陰月を仕上げ
これで腹板が出来上がりました
半月を仕上げる動画をUPしました


こちらは内側





2012年2月28日火曜日

平家琵琶、槽を削る


製作中の平家琵琶の槽(甲・裏板)の
内側を削りました

ウッドカーバーで荒彫りした後
鑿・ノミで厚み調整していきます



完成

中世中山仕上砥おそるべし

注文していた中世中山仕上砥が、さゞれ銘砥(330mate)から届きました。期待どおりの銘砥でありました。
数年前、木工家の徳永さんのところで、徳永さんの師である竹内碧外が使っていた仕上砥を見せてもらい、研がせてもらったのですが、その砥石に魅せられ、同じようなものがないものかと探していたのです。
ザクザクとした研ぎ応えにもかかわらず、仕上がりが
緻密で、1本の仕上砥で中継ぎと最終仕上げを兼ね備えているもの・・
この夢のような仕上砥は、「さゞれ銘砥」の中岡氏が掘っている中世中山砥にあるに違いないと確信。機会があるごとに1本、また1本と手に入れていたのです。
ほぼ近いものには数本出合いましたが、まだ何かちょっと違うという感が拭えないでいたのです。
そして念願叶い私にとっての理想の仕上砥に出会うことができたのです。中岡氏に感謝、感謝です。 


これは先般手に入れた
佐野勝二作・昭豊銘の寸八鉋
研ぎ面は一分研ぎ(幅3mmほどの研ぎ面)ですが

このように良く反応し
強い研磨力があります
そして鋼(はがね)は鏡面近くまで仕上がるのです
鋼は安来鋼・青紙と思われます




そしてこれは炭素鋼の石社(いしこそ)・寸八
研ぎ面は二分(約6mm)研ぎ




そして研ぎ面三分(約9mm)研ぎの
千代正鉋・寸八



どちらもこのような感じで反応します

平家琵琶の撥・バチを切り抜く


製作中の平家琵琶の撥を切り抜きました
動画UPしました
素材のツゲ材を削っているところは
昨日紹介しました