2013年5月21日火曜日

安来鋼・白紙1号鉋、焼き入れ直し


いま使っている「も作」銘寸二鉋(身幅50mm)が
刃がかなり短くなったので
それに代わるものとして、同じ鋼(安来鋼・白紙1号)の
某有名メーカーのものを数ヶ月前に手に入れていたのですが
これがどうも調子が良くない・・
というよりも、これでは仕事では使えない

ギターの補強材にするスプルースをちょっと荒削りしただけで
ご覧のように、刃先がグニャグニャと変形している
もちろん切れは止まっています

銘にはモザイクをかけましたが
研いだ感じも焼きが甘すぎるかなという印象が強い
小鉋とはいえ価格は安くはない
だが、こういったものは返品は利かないだろうから
自分で焼き入れをやり直してみることにしました
焼き入れの様子は以前YouTube動画をUPしましたので


ということで焼き入れを決行し
画像は焼き戻しをしているところ
炭素分が多い鋼の特性を活かすため
低めの温度、約170度で1時間ほどやってみました

焼き入れでの歪みを修正するのに
やや苦労しましたが
何とか研ぎ上げてみました

研いでみて、以前よりも強靭さを感じます

刃先は問題ありません
焼き戻しもうまくいったようです

ということで早速他の鉋を含め寸二鉋3丁で
削り比べをやってみました

YouTube動画UPしました その1 その2 その3

以下はその画像です
製作中の19世紀ギターの補強材にする
スプルース材を荒削り

も作・寸二

勘兵衛・寸二


そしてウォルナット材を荒削りしました

も作

勘兵衛

3本の動画撮影後の刃先の状態です
これは某有名メーカーの寸二
刃先はほとんど変化はありません
かなり強靭になり、永切れするようになりました

そして「も作」銘・寸二のもの
上に比べると、やや刃先が摩耗しています
切れはまだ止んでいません

3丁めは、古い大阪鉋「勘兵衛」銘・寸二
これは炭素鋼系ですが
時代から判断しておそらく玉鋼と思われます
やや焼き入れが甘いので
3丁の中では最も刃先が摩耗しています

以上、これで焼き入れをやり直した鉋は
何とか仕事で使えるようになりました

2013年5月18日土曜日

工房の様子 國行銘寸六鉋 活躍の巻


先日手に入れた國行銘寸六鉋
なかなかやってくれます
複雑な杢のウォルナットの薄板を削ってみましたが


切れは軽く、深い逆目も止まっています





板の厚みは約1,5mm




これは製作中の19世紀ギター、ウィーン・タイプの
サウンドホール縁飾りになります


ウィーン・タイプの響板と裏板
弦長は600mm



こちらは同時製作中の19世紀ギター
ラプレヴォット・タイプの響板と裏板
裏板は燻煙熱化学処理されています
弦長は630mm


工房の様子 國弘寸六鉋大活躍の巻


先日手に入れた昔の職人さんによって
使い込まれた國弘銘寸六鉋を
仕事で使ってみました


製作中のマリアハープの構造材をかなりの量削りましたが


刃先がやられやすいセドロ材を荒削りしても
なかなか永切れしてくれます
日原大工が使っていた國弘と比べてしまうと劣りますが
このレベルのものはなかなかお目にかかれません


裏板を接着したところ


響板に補強材を接着


響板の接着を終え、裏板に空気抜きの穴を開けたところ


2013年5月17日金曜日

藤四郎銘組鑿の寸二追入ノミを研ぐ


播州(兵庫県南部)日原大工の棟梁が使っていた
千代鶴是秀作と思われる藤四郎銘組鑿ノミの
寸二追入鑿を研ぎ上げました












はがね部分を拡大してみました
刃先がやや荒れていますが
原因は今のところ分かりません
今後の課題としておきます
組鑿10本を研ぎ上げた時点で何か分かるかもしれません



研ぎに使った砥石
今回依頼を受けている藤四郎銘の組鑿は
できるだけ丹波産の砥石を使いたいと思い
このような組み合わせにしてみました

上段左端は人造砥のシャプトン「刃の黒幕」#320
その右は丹波亀岡・岡花産青砥(粒度約#1200)
右端は今回手に入れた青砥(粒度約#2000)
下段左端はこれはかなり硬い青砥で粒度は#2000以上あります
その右は丹波亀岡・丸尾山産巣板(黒蓮華)
右端は丹波亀岡・一本松産戸前




これは一本松産戸前ですが
ノミや小刀の最終仕上げ用として
現在主力で使っているものです
刃物を選ばず使え、たいへん重宝しています


地鉄じがねも研ぎ傷が肉眼では見えないほど仕上がります
上部の柿の木の枝が写っています

2013年5月16日木曜日

新たに入手した砥石を試し研ぎ 重延寸八鉋を研ぐ


YouTube動画にUPした鉋研ぎ動画の画像を紹介しておきます
研いだ鉋は古い会津鉋・重延寸八
動画で最初に使ったのは
産地不明の青砥
この中砥は時折見かけることが
あるのですが
丹波亀岡産の青砥や佐伯砥とは
明らかに違います
森砥石さんも丹波のものではない
とおっしゃっていました
関東の荒内砥でしょうか

ほど良い硬さで良く反応し
強い研磨力があります
丹波産に見られる針気は
ほとんどありません
以前紹介した和束産青砥
よく似た研ぎ感と研ぎ上がりです


次に使ったのは丹波亀岡産佐伯砥です
これは姫路の砥石店から
入手したものですが
側に書かれた「佐伯」という字は
森砥石さんが書いたものだそうで
随分以前に森砥石さんのところから
出荷されたもののようです

緻密な石質なので目起こしをした方が
より良い効果を得ることができます

これは14日に紹介した
昔の職人さんが使っていた青砥で
おそらく丹波亀岡・岡花産と思われます

これも目がよく締まっているので
目起こしをして研ぎ始めました

地鉄には荒めの傷が付きますが
鋼は緻密に研ぎ上がります

これも14日に紹介した
新たに砥取家さんから手に入れたもの
丸尾山の黒蓮華・巣板は
これまで4丁ほど購入しましたが
硬さや反応はどのような刃物にも
対応できる感じを受けます

反応よく、心地よく研ぐことができ
強い研磨力があります

地鉄じがねには荒めの傷が付きますが
鋼はピカリと光ります

最終仕上は丹波亀岡・一本松産戸前
これも砥取家さんから
お世話になったものです

この仕上砥も刃物を選ばず
使うことができます
現在、ノミや小刀の最終仕上げとして
主力で使っているものです

はがねは鏡面に仕上がり
地鉄も砥石の傷が肉眼では
確認できない程度まで仕上がり
肌が美しく現れます
優秀な最終仕上砥です

以上、紹介した丹波産砥石は
実は依頼を受けて研いでいる
藤四郎銘組鑿を
研ぐために手に入れたのです
丹波の地で研いでいるので
できれば丹波産の砥石を・・
と思った次第であります・・