2015年1月19日月曜日

中世たたら実験操業の様子 新見の銑押し製鉄

岡山県新見市で毎年行われている
中世たたら実験操業で、昨年2014年
操業以来8年目にして銑鉄の生成に成功したということです
関係者の仲田芳人様から画像の提供を頂きましたので
その様子をお伝えしたいと思います

以下は仲田芳人様による報告文から引用したものです

新見市は中世の時代、京都・東寺の荘園として栄え
新見荘の年貢は鉄、和紙、漆などでした
25年前から中世の歴史を生かしたまちづくりを進めていて
その一環として「中世たたら製鉄」の再現操業が
2006年から市内正田の操業施設で行われています


今年2014年の操業は10月25、26日に行われました
縦横1m×1.7m、高さ1.25mの中世の炉を築き
夕方6時から翌日の午後3時半まで昼夜操業しました




今回の操業で使った砂鉄は765.8kg、木炭1153kg
出来た銑鉄(ずく)は約400kgと推定されています


4台の手押しふいごは、市内外の300人が交代で
「押して、引いて」の掛け声に合わせて押し、炉に風を送り続けました
新見の「たたら」製鉄は、「ずく押し」と呼ばれる銑鉄(鋳物鉄)造りです
「ずく押し」は明治時代半ば以降途絶えていた技術ですが
ついに今回、「ずく押し」を日本で初めて成功させ、快挙を達成しました




中世の炉を再現しての操業は全国でも例がありません
全国各地の企業、大学、研究者、一般の方々等
たくさんの人が操業を支え、活気があふれています










26日午前10時ごろ、炉底部のノロを取り除くと


ドロドロと「流れ銑(ずく)」が流れ出した
まるでおろちのようにも見え、感動的な瞬間でした












16年前から新見の「たた」らを指導されてきた
国選定保存技術保持者の木原明さん(奥出雲町)は
「炉の構造と砂鉄の配合を変え、8年間の試行錯誤の成果
炉はまだ元気で100%大成功」 と話されました

昔の会津刃物産地(福島県)では所によっては
自家用の小精錬所で銑(ずく)を吹いていたということが
堤章氏の著書 「会津の刃物鍛冶」では説明されていますが
今回備中新見(岡山県)で出来た銑で
どのような刃物が作られるのか興味が湧くところであります


2015年1月14日水曜日

昔の職人さんが使っていた会津刃物 重輝銘 櫛刃鉋を入手

昔の職人さんが使っていた会津鉋を入手


身幅42mmほどの一枚刃ですが


刃先が櫛刃になっています


櫛刃鉋は西洋独特のものと思っていましたが
日本にもあったのか、とちょっと驚きました
手工道具全盛期の道具カタログにも
櫛刃鉋は載っていないので
おそらく特注で誂えられたものと思われます

このページでも櫛刃鉋は日本には全く存在しない
と説明されています


櫛刃鉋は杢の深いメープルや堅木削りで
主に使われたものと思われますが
西洋ではヴァイオリン製作で有名な
ストラディバリも使っていたようです
また、19世紀ギターにも裏板や横板の内側に
櫛刃の削り痕が残っているものをよく目にします
ですから西洋ではかなり古くからこの鉋が使われたようです




とりあえず研ぎ上げてみました


堅木削りにも使われるので鋼は東郷鋼かな・・
と思っていましたが玉鋼でした
これにもちょっと驚きました


研ぎ角度は刃先から1mmほどを約29度に研ぎ直しました


刃口も広すぎる状態なので


補修




さっそく試し削りをやってみました


削った板は深い杢のメープル材
荒削りをやってみましたが
切れは通常の刃先よりも軽い感じはあり
一枚刃でも逆目はほぼ止まっています




台は白樫ですが、どういう訳か黒く塗られています
水には溶解しないので墨ではなく
ステインのようなものが染み込ませてある感じです


櫛刃の削り痕は通常はスクレーパーで削り落とすようですが
普通の寸八鉋で削ってみました
せっかく荒削りで会津鉋の重輝を使ったので
仕上げ削りは重正銘(鋼は玉鋼)を使ってみました


艶のある美しい削り肌で
逆目もきれいに止まっています
このように平面を削る場合は
スクレーパーで苦労して削るよりは
通常の仕上げ鉋を使った方がかなり楽ですが
ヴァイオリンなど曲面削りには
スクレーパーが向いているでしょう


試みに木口を荒削りしてみましたが
なかなか具合がよい感じです




試し削り後の刃先の状態
ほとんど変化はありません
当面、木口の荒削り用として使ってみようと思います

他の会津鉋はこちらでまとめて紹介しています
参照下さい

2015年1月13日火曜日

偲石とドイツのDICTUM

偲石(しのぶいし)をゲット
ドイツ産(時代はジュラ紀との説明がある)


樹木のような模様が出ているが
化石ではなく自然にできた模様らしい
模様の成分は酸化マンガンと説明されている
それにしても不思議である・・
そういえば砥石にも似たようなものがある・・
蓮華とか紅葉とか・・


反対面の模様



こちらは今日ドイツのDICTUMから届いたカタログ


表紙の写真が先日小刀の紹介でUPした
写真に似ているのにビックリ・・



それにしても、楽器用の刃物に日本製が多いのに驚かされる・・






2015年1月11日日曜日

古い会津刃物、重春銘鉋身を特殊小刀に作り変える

昨日紹介した重春銘の鉋身を研ぎ上げました


グラインダーで形成した際には分からなかったのですが
鋼の厚みに余裕があるので


先端はもっと反らせてもよかったかも・・




研ぎに使った砥石群
右から荒研ぎ用人造砥石(粒度#400程度)
その左は産地不明の天然中砥(粒度#600ほど)
その左も産地不明の中砥(粒度は#(800~1000)
その左は丹波亀岡・岡花産青砥(硬口・粒度#1200ほど)
左の2丁は仕上砥で、右は丹波亀岡丸尾山産・天井巣板(内曇)
左端は京都梅ヶ畑・中世中山産戸前


さっそく試し削り
最初に軟材から、30年ほど寝かせたヨーロッパ・スプルース
玉鋼独特のザラつきがあるものの切れは悪くない


次にやや堅めで粘りがあり
深い杢と逆目が交じったウォルナット材
スプルースを削るよりは切れは軽く感じる
削り肌も問題なし


次に粘りの強いソフト・メープル材
これも問題なく削ることができる
他の優れた小刀に比べると、切れはやや重いかなという感じ


最後に堅木でしかも粘りの強い
ホンジュラス・ローズウッドを削ってみた
こういった堅く粘りが強い材に威力を発揮してくれる


柄が付いた3丁は日本刀の短刀から
特殊小刀に作り変えたもの
左端は藤井刀匠作の短刀
その右は江戸時代後期頃と思われる短刀
右端は室町時代後期頃と思われる短刀


これらと比較しても切れ具合や刃先の強靭さは
ほとんど遜色ありませんが
堅木を削った際に刃こぼれがあったので
ちょっと焼戻しました(約180度で30分ほど)





それから、先端の反りがもう少し欲しいところなので
先端だけ裏を研ぎ直しました


研ぎ直した状態


これで仕事で使えそうです


ということで、さっそく楽器の修理・修復で使ってみました


修理を終えた状態


特に、こういった削りの際に
先端が反り上がっていると大変助かるのです