2012年3月13日火曜日

中世中山砥で三代目千代鶴鉋を研ぐ


You TubeにUPした研ぎ動画
画像を紹介しておきます
研いでいる鉋身は三代目・千代鶴
落合宇一作「三水」銘 寸八です 

最初に使っているのは
無印のセラミック砥石(人造中砥)
粒度は#1000






次に今日手に入れた
京都梅ヶ畑・中世中山産の仕上砥
厚みが5cm以上あり
裏側の皮が薄めだったので
5mmほど削り
こちら側も研ぎ面にしてみました
ザクザクと良く反応し、強い研磨力があります
砥泥は邪魔にならず
砥面の底力を充分感じることができます

人造中砥の深い傷が短時間で消えました

筋はほとんど死んでいますが
地鉄(じがね)にやや及ぶものがあります
(はがね)は大丈夫です
後で筋は掘って除去します





こちらは本来の研ぎ面
この面の筋も死んでおり
ほとんど当たりません

こちらの面もよく反応し
裏側よりは緻密に仕上がります
荒い研ぎ応えにもかかわらず
鋼が鏡面近くまで仕上がるのは
実用上大変助かります





研ぎ上げた鉋で
燻煙熱処理された国産カラマツ材を
削ってみました(参照





厚みを約1mm減らした刃先の状態
通常のスプルースよりも
刃先の摩耗が激しい(参照 




その後、ハイス鉋を研いでみました
こちらは裏面で、筋を2本除去しました
よく反応し、強い研磨力を発揮します





こちらは表面
こちらも同様に良く反応します





ハイス全鋼鉋も研いでみました
両面とも良く反応します

ハイス全鋼鉋刃でも
通常の、薄い鋼(はがね)を鍛接した鉋身と
同じように反応するというのは
ちょっと考えられません
恐るべき仕上砥です



2012年3月12日月曜日

長勝鋸とレザーソーで本黒檀のフレット溝を切る

長勝さんに目研ぎをしてもらったフレット・ソーと
フレット・ソーとして使っているレザーソー180厚刃
で本黒檀・コクタンの試し挽きを行いました

長勝さんに目研ぎをしてもらう前の
同じ鋸でフレット溝切りをしている
動画も参照ください


下から1・3・5本目の切り溝が替刃式レザーソー
商品銘はレザーソー180厚刃 No.S-293
2・4・6本目の溝が長勝さん目研ぎの
谷口清三郎銘の導突鋸
どちらも良く切れますが、長勝鋸の方が
切れ音はスムーズで、切れ痕も美しい
試し挽きをしながら感じたことは
フレットの溝切りは、この2種類の鋸を使うと
より効率的に行えるのではないかということです


替刃式レザーソーの180サイズ厚刃は
やや切り溝の幅が広いので
アサリを狭くする必要があります
その時に重宝するのが
このダイヤモンド・シャープナーです
粒度は#1000ほどの細かいものです


このダイヤモンド・シャープナーを
鋸板面に沿って軽くアサり部分を全面擦ります
両面軽く1回擦るだけで切り幅は
狭くなりますので、試し挽きをしながら
切り溝の幅を調整していきます



燻煙熱処理された国産カラマツ材を削る


燻煙熱処理された
国産カラマツ材が届きました
これはBoxハープの響板として使えそうです

きれいにプレナー加工されていました




工房に吊るして1日ほど経った状態
やや反ってきました
こういったことも想定して
板を厚めにしてもらっていたので
ひとまず反りを修正してみました
鉋かけの動画をUPしました





使った鉋は、三代目千代鶴
落合宇一作寸八、鋼は炭素鋼系





削った手応えでは
年輪の冬目と夏目の硬さの違いは
それほど感じませんが
鉋の刃先は堅い冬目で細かく欠けます





これでまたしばらく様子を見た後
接ぎ合わせ接着をしようと思います





動画で使った後の刃先の状態
部分的に大きく摩耗しています
通常使っているヨーヨッパ産のスプルースとは
違った刃先の摩耗の仕方であります

2012年3月10日土曜日

平家琵琶の鶴首を仕上げる

製作中の平家琵琶
きょうは鶴首をじっくりと削りました




木の芯はこのように残りました
強度的には全く問題ないし
手に当たって邪魔になるようなこともないので
埋木などはせず、このまま残すことにしました
カリン材が生きていた時の証です

これでこの琵琶の銘も決まったようなものですね
「木芯・もくしん・ぼくしん」とでもしておきましょうか・・

もう少し鶴首を仕上げてから
海老尾を膠接着します
これは仮に収めたもの

新作 端材オブジェ


2012年3月9日金曜日

長勝鋸 窓付導突鋸で19世紀ギターのネックをカットする


きょう、京都の長勝鋸さんのところへ
注文していた窓付導突鋸を
受け取りに行ってきました
長勝さんによる目研ぎが施された
窓付導突一尺鋸(刃渡り約30cm)


不安定な状況で切ったにもかかわらず
切り口が滑らかに仕上がっています
以前UPしていた通常の導突鋸で
挽いた切り痕と比較してみてください





途中通った京都嵐山


新作オブジェ


端材オブジェ、新作1点出来上がりました

2012年3月6日火曜日

ポルトガル・ギターのブリッジ

今日はポルトガル・ギター奏者の
湯浅隆氏の依頼で、氏が使っている二台の
楽器のブリッジ調整を行いました
湯浅氏との付き合いも長く
もうかれこれ20年以上になるのでしょうか・・
その間、考えてみれば二台の楽器のブリッジを
同時に調整するというのは
初めてのことと記憶しています

これは拙作の楽器のブリッジ
下がこれまで使っていたもので
上が新たに作ったもの
材質はどちらも牛骨です
今回は弦高をやや高めにするために
作り換えたのですが
この楽器はやや派手に鳴り過ぎるので
ブリッジを厚めにし、肉付けも変えてみました

結果、音が太くなり、派手な鳴り方も
かなり抑えられました
楽器を受け取りに来た湯浅氏も同じ感想でした
因みにこのフレッティングは
ヴァロッティ&ヤング音律(参照
 
こちらはポルトガルの名工の楽器
こちらは上の楽器とは逆に音が太く
鳴り方がやや重い感じなので
以前のブリッジを削り
肉付けを少なくしてみました
弾いた湯浅氏の感想は
元気ハツラツになった、というものでした

以上、二例のブリッジの肉付けの変化は、これまでの経験で、ちょっと削ったり、厚くしたくらいでは音質には影響はなく、見た目でもかなり違ったなというくらいの変化がなければ影響は及びません。ここのところはヘーゲル同様のことを述べていて、質が変化するためには、ある程度の量の変化が及ばなければならないとして、私の記憶に間違いがなければ、馬の斑(まだら)模様のたとえ話が続きます。馬の斑は違った色の毛の集まりですが、これが1本や2本では斑に見えず、人間の目で見て斑に見えるにはある程度の本数(量)が必要である、というようなことが述べられているのです。このことは楽器を作る際にも重要なことで、たとえば、楽器の構造について顕微鏡レベルで語ることはあまり意味がなく、それを作ったり、弾いたりする人のレベルで見るものなのです。
ここのところを見失うと、とんでもない方向に行ってしまい、居場所を見失ってしまうのですね。
ですから、楽器を作ったり弾いたりする人によって判断は様々あるわけで、それでいいのです。
ただ、それを客観的に知ることも大切なことで、ギター製作の名工・ロマニロスも20年ほど前にそのことに言及しているのを知ったことがあります。


2012年3月5日月曜日

平家琵琶の海老尾の輪郭を仕上げる

製作中の平絵琵琶
海老尾の輪郭が出来上がりました
この後、転手(糸巻き)を差し込む穴を開け
糸倉を切り抜き、最終仕上げを行います






平家琵琶の海老尾をレザーソーで挽く

製作中の平家琵琶の海老尾を
替刃式レザーソーで挽いてみました

先日、近所のホームセンターで購入したものです
これまで、替刃式の鋸は刃渡り265mmの
挽き切り鋸や150mmの導突鋸は使っていましたが
このサイズ(180mm)の両刃鋸は初めて使いました



古事類苑のカリンと花梨

古事類苑から
バラ科のカリンとマメ科の花梨の記載
を紹介しておきます
右クリックで別ウィンドウで開くと
大きな画像を見ることができます

製作中の平家琵琶の撥面の絵は
カリンの実を幼少の義仲(木曽義仲)
もぎ取っているところにしようかなと思っています
そこで、カリン酒などを作る
大きな実の生るバラ科のカリンが
義仲の時代(平安時代末)に日本にあったのか
知りたいところなのですが
日本に入って来たのは不明のようです
原産は中国東部(参照)とされているようです

Wikipediaでは中国では木瓜と書くとされていますが
それは日本の木瓜とは違うようです
日本の木瓜(ぼけ)は古事類苑では
真の木瓜は享保年間(江戸時代中期)
日本に渡って来たとされ、カリンとは区別されています