2012年5月14日月曜日

中世中山仕上砥二種類で鉋身を研ぐ


YouTubeにUPしている研ぎ動画
画像を紹介しておきます

これは中研ぎの最初に使っている
上野(こうずけ)国(群馬県)産
砥沢・虎砥(沼田・虎砥)
粒度は約#1000

研いでいる鉋身の鋼(はがね)
1970年代のスウェーデン鋼


次に使っているのは
丹波亀岡・岡花産青砥
粒度 約#1200


上野国(群馬県)産瓢箪・沼田砥
粒度#1500程度


ここからは仕上げ研ぎです
まず最初に使っているのは
中継ぎ用の粗めの仕上砥
これは昔の木工職人が使っていたもので
おそらく中山産のものだろうと思われます


ザクザクとよく反応し


あっという間に中砥の傷を
消すことができました


そして新たに「さゞれ銘砥」から
手に入れた中世中山仕上砥
やや硬めですが反応よく
心地よく研ぐことができます
中央上部に太い筋があり
一応除去しましたが、まだザリザリと
当たるところがあります
ですが地鉄(じがね)や鋼(はがね)
傷は付かないので
それほど気にすることはないようです




地鉄(じがね)にはやや荒めの傷か付きますが
鋼はほぼ鏡面に仕上がります


この仕上砥は研磨力が強いので
岡花産青砥(粒度約#1200)で研いだ後に
使ってみましたが
少し時間をかければ(3分ほど)
ここまで仕上げることができます
仕事で使うにはこれで充分です
鉋身は藤井刀匠作・玉鋼寸八


これも今回「さゞれ銘砥」から手に入れた
中世中山仕上砥


これは硬めの鏡面仕上げ用ですが
良く反応し、心地よく研ぐことができます




2012年5月10日木曜日

工房の様子 響板と裏板を仕上げる


製作中の2台のギター
響板と裏板をほぼ仕上げました

弦長650mmの小型モダン・タイプ






こちらは弦長625mmの19世紀ギター

裏板はこれから彫っていきます


2012年5月9日水曜日

2012年5月6日日曜日

グレン・グールドのオルガン演奏


グレン・グールドがバッハの「フーガの技法」をオルガンで弾いているCDが昨日届いた。仕事をしながらずっと聴いているが、仕事に集中できる度合いが深い。
バッハの「フーガの技法」は好きな曲の筆頭に挙がるものなので、若い頃からいろいろ聴いてきたが、グールドのオルガンは格別である。「フーガの技法」はバッハの絶筆とされている曲で未完のものである。この最後の音符から最初に戻っても何ら違和感がないのがおもしろいところで、これは漫画家・手塚治の絶筆の未完作品「ネオ・ファウスト」が、途切れているところから最初に戻ってもスートーリーが繋がるのと同じで興味深い。
手塚治のネオ・ファウストはゲーテの小説「ファウスト」を元にして描かれているものだが、テーマを進展させるために時間の流れを行き来させ、過去・現在・未来がリンクされている。フーガの技法も同様で、フーガを進展させるとどうしてもある時点で最初に戻る必要性を
バッハは感じていたのではないか。




丹波篠山で雹が降る

2012年5月6日午後2時頃
激しい雷を伴い丹波篠山で
雹が降る
10分ほどの出来事
午後2時半現在
今は晴れている





これは1cmほどの大きさだが
大きなものは3cmほどもあった


2012年5月4日金曜日

ゲーテとの対話風金谷幸三氏評

きょうは神戸で行われたギタリスト・金谷幸三氏の演奏会に足を運びました。演奏曲目は19世紀の曲ばかりという今では珍しいプログラムですが、金谷氏独特の
エスプリの効いた解説と演奏であっという間に時間が過ぎていきました。
金谷氏の歌い回し、音楽の運びに身を任せながら、ふと、この演奏を19世紀の作曲者自らが聞いていたら何と言うのだろうか・・と思ってしまったのです。
ということで、今日演奏された曲の作曲者、F,ソル D,アグアド M,ジュリアーニ3名による鼎談を空想で創り上げてみようと思ったのですが、いや、それよりも金谷氏が19世紀にタイムスリップして、ゲーテの館で演奏をしたという設定の方がおもしろいかも、とも思ったのです。
そういうことで、金谷氏には俎上のコイになってもらって、晩年のゲーテと若いエッカーマンが対話した記録「ゲーテとの対話」(参照)風に仕立ててみました。


1826年5月4日 
昼間、ゲーテの館で21世紀の日本からやって来たという不思議な日本人によるギターの演奏会が行われた。
彼が使うギターはヨーロッパではあまり見かけない形をしていて、大きさもやや大きい。
ゲーテは演奏が始まるや驚いた様子で、時折こちらに目を向けた。招待した客人も一様に顔が左右に動き、隣りの人物と目を見合わせているのが後ろからでも分かるほどであった。
休憩時間に、ゲーテは私(エッカーマン)にこう呟いた。
「この演奏を、この曲を作曲した連中が聞いたら何と言うだろう・・」
「そうですね、今日が初演ですから・・これからいろいろなサロンや館で演奏が披露されるでしょうが、とりわけギターが盛んなパリやロンドンでは評判となるでしょう。」と私は答えた。
ゲーテは、ウィーンのサロンの寵児としてもてはやされているジュリアーニがベートーベンのオーケストラでチェロを弾いたことがあるいう話をベートーベンから聞いたという話(これは記録に残っているので事実だったようです)をし、続けて、「ここヴァイマルでは音楽の楽しみはオペラが主で、ギターはあまりもてはやされてはいないが、この不思議な日本人のような演奏を聞けば興味を示す者が増えるかもしれないね。」
21世紀から来たという不思議な日本人は、彼の時代のギターの事情をいろいろと話してくれたが、
資本主義、民主主義という時代背景に加え、奏者がいなくても音楽を再生させる機械があるというのは我々にはちょっと理解ができない。演奏家というものは音楽産業の商品にしかすぎないという話にはゲーテは理解を示していたが、そのことから、話が古代ギリシャ時代やルネサンス時代に及び、ゲーテは、「たとえば、ピタゴラスの時代(紀元前6世紀頃)、彼の教団では、若い者の教育は音楽、数学、天文学が重要視され、午後からの授業は体育だったそうだ。
知性、情操、そして体力、武術、つまり文武両道を理想としていたのだね。
それからルネサンス時代は優れた職人や芸術家を輩出させるために作品の公募や公開のコンクールが盛んに行われた。これは不思議な日本人が話してくれた21世紀も同様ではないのかな。」
私は、「つまりルネサンス時代の職人や芸術家がパトロンや権力者に認めてもらうために腕を競ったのと同じことを民主主義の21世紀にも行っているということですか・・?」と訊ねた。
ゲーテは「そうだね。21世紀の演奏家が音楽産業の商品であるためには優秀な商品でなければならないからね。それから商品は商人に都合のよいものでなければならない。
ルネサンス時代の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチでさえ権力者に雇ってもらうために涙ぐましい売り込みをしているほどだが、商品が感情を持った人間であるというところに21世紀の自由主義、民主主義という背景での商品と商人の軋轢が起こってくるだろうね・・ことに芸術家はプライドが高いからね・・」

以上は田中清人によるフクションであります。



2012年5月2日水曜日

工房の様子


これは昨日の様子ですが・・

今回製作の特注ラプレヴォット・タイプ
弦長625mm Suzuki音律
響板はアルペン・スプルース
裏・横板はチェコ産メープル







こちらは特注の小型モダン・タイプ
フォルクローレ用ギターとして
製作しているものです
弦長650mm


現在のところ予定よりも
製作進行が遅れております
ご注文を頂いております皆様には
ご迷惑をおかけしますが
どうぞご了承ください


2012年5月1日火曜日

不思議な符合・・



先日出来上がった平家琵琶
神奈川県に旅立っていったのですが
注文をして下さった方が
その琵琶のことを近所の氏神様に報告に
行かれたのだそうです

先般説明したように
この平家琵琶の撥面には
木曽義仲に因んだ絵を描いたのですが
なんと、報告に行かれた神社の宮司さんは
木曽出身の方で
その地は木曽義仲の菩提寺が
ある所なのだそうです

これには驚いてしまいました・・
こんなことがあるのですね・・

角田直子さんの写真


知人から、写真家・角田直子さんのことを聞き
さっそく写真集を購入しました

写真集のプロローグから・・
「子供の頃 夢中で読んだ小人や妖精の物語
不思議なことが大好きだった
誰に教わったわけでもないのに
宇宙に向かって感謝の想いを送っていた
やがてそんなことはすっかり
忘れた大人になっていた
けれど 何か違う とどこかで思っていた

ひょんなことから写真を撮るようになって
大自然の中に放り込まれた
すっかり忘れ去られていた感覚
呼びさまされてきた
ひとり静かに自然と向き合うと
深い心の奥底で「カチッ」と
宇宙に繋がる音がした
そして不思議なことがいっぱい起こってきた・・」

この言葉が、なるほどと全く理解できるような
すばらしい写真ばかりでした

いま住んでいる ここ丹波篠山の
自然もすばらしい
ですが、見知らぬ大地の営みを
純粋で素直な写真家の感性を
通して見ることができる
この世界はまた格別なのです


2012年4月29日日曜日

謎の砥石 外国産の仕上砥

4月26日にUPした研ぎ動画
画像を紹介しておきます
研いでいる鉋は「も作」・寸六
鋼は安来鋼・白紙1号と思われます

最初に使っているのは
先日紹介した浄教寺砥で
二つに分けたものを両方試してみました
左が本来の表面で
右が切り分けた内部を
研ぎ面にしたものです
内部を研ぎ面にした右の方が
荒い研ぎ感ですが

研ぎ上がりはほとんど同じです


次に使ったのは粒度約1000番の伊予砥

次に三河中名倉 粒度約1500


そして対馬砥の代替砥石として
手に入れたものを使ってみましたが
これはほとんど鏡面仕上げ用の
仕上砥でした


つぶさに観察してみると
手持ちの大谷山産戸前
浅黄によく似ています


この砥石を手に入れた所によると
産地は日本ではないが
明らかにはできないということでした

動画で最後に使っているのは
京都梅ヶ畑・中山産の戸前
文句なしの仕上砥です


2012年4月28日土曜日

最終中研ぎ用天然砥石


中研ぎの最終段階として使う天然砥石を
今いろいろと試しているのですが
ようやく目的に叶うものと出合えたようです
これまで、粒度#1000程の中砥の後に使う
ものはどうしても2種類使う必要があったのですが

今回さゞれ銘砥から届いたこの伊予砥ならば
これ1種類で済ますことができそうです
同様の伊予砥はこれまで5本ほど
手に入れてきましたが
なかなか満足できるものに
出会えなかったのです・・ 





私はできるだけ早く研ぎ上げたいので
研ぎ面の幅は10mm以下にしているのですが
上のもののように5mmほどの研ぎ幅だと
これに反応してくれる目〆系の中砥には
なかなかお目にかかれないのです

この鉋身は初代・佐野勝二作の寸八
鋼は昔の優れた青紙鋼と思われますが
刃先の強靭さは手持ちの鉋の中でトップクラスです
しかも研ぎ易いので、今は仕上げは
この鉋ばかり使っています


この目〆系の伊予砥は
目起こしをすればかなりの研磨力があり
しかも短時間でほぼ研ぎ傷が見えなくなるまで
仕上げることができるのです
これには大変助かります





これは白梅銘の昔の東京鉋・寸八
鋼は甘めの白紙鋼と思われますが
切れ味軽く、驚くほど永切れします
1枚刃の中シコ鉋として重宝しています
昔の東京鉋は鋼が薄いものが多いのですが
これは特に薄くなっており
鎬に見えているところで1mmありません
研ぎ面の幅は8mmほどですが
これでも目〆系の天然中砥には
なかなか反応してくれないのです

目起こしをして精一杯研いで
こんな感じです・・