銑せんという古い道具を手に入れました
重春という銘が刻まれています
打たれたものだと思われます
会津の桶作りの道具として
地・刃ともに健全で
研ぎ直せばまだまだ使えるでしょう
しかし、私は銑として使うことはない・・
刃の長さは24,5cm、身の幅は4cm強
厚みは4mmはある
これだけあれば小刀や小鉋身が
多く取れるだろう・・
歴史的資料として残しておくべきか・・
悩むところであります・・
堤章著「会津の刃物鍛冶」によると
重春銘について、このように説明されています
のように刻まれていますが
これは明治以降の近代会津刃物鍛冶の
先駆者とされる重房銘の刀工であった
若林安右衛門の長男安左衛門の
流れだということです
一方、本来の「重」の字を刻んだのは
若林安右衛門の二男猪之吉の流れだそうです
昨日仕上げた鉋身には
台も付いていましたが
かなりひどい状態だったので
長さを短くして
なんとか身を収めました
ちょっと頭デッカチになってしまったが・・
刃口も補修したので
これで一応削ることができそうです
ギター用ヨーロッパ・スプルースを
削ってみましたが
パサパサの削り屑で艶がありません
削り肌はそれほどひどくありませんが
刃こぼれの痕が残っています
拡大した刃先はムラがあり
部分的に刃こぼれがあります
約180度で1時間焼き戻しをしてみました
研ぎ直した状態
刃先が精緻になり
刃こぼれもなくなっています
削った手応えも軽くなり
削り屑に艶があります
削り肌も滑らかになりました
これで仕事に使える状態になりました
古い鉋身を手に入れました
身幅5.7cm
刻印銘がありますが判然としません
二字めは房と思われます
ひどい錆でしたが
なんとか使えそうです
古い鉋身によく見られる
薄い造り込みです
研ぎ易く、しかも鋼(はがね)には
強靭さを感じます
刃先を拡大してみると
微細な刃こぼれが確認できます
玉鋼特有の状態です
焼き戻しでうまく直って
くれるでしょうか・・
地鉄(じがね)は細緻でたいへん美しく
幕末・新々刀期の刀を見ているようです
仔細に観察すると微細な柾目のようで
地沸(じにえ)がキラキラと細かく輝いています
和鉄独特の景色です
現代の鉋ではほとんど見られません
拡大しても美しさが伝わってきます
小刀2点の成形を終えました
右は片切刃、左は平造り
どちらも刃角度は約25度
焼き入れはまだまだ先になりそうです
これは鋼材から切り出したところ
焼き戻しをしてみました
温度は約180度で1時間
前回研いだ際には最初に
赤浄教寺(じょうけんじ)砥
粒度約800を使いましたが
今回は沼田・虎砥(粒度約800)に
してみました
以下の使用砥石は同じです
これは小鳥(おどり)砥
粒度約1200
そして中研ぎの最終段階として
三河白名倉(粒度約2000)
この砥石は小さなものですが
力のあるすばらしいものです
小さくても寸八鉋身も研ぐことができます
このような三河名倉砥の大判には
もうお目にかかれなくなってしまいました
ここからは仕上げ研ぎ
中砥の傷を早く消すため
最初に粗めのものを使いました
この砥石は京都梅ヶ畑・中世中山産
そして同じく梅ヶ畑・尾崎産の合砥
最後に梅ヶ畑・奥殿(おくど)産の
合砥で鏡面仕上げを行いました
焼き戻しをしても、研いだ感じに
まだまだ強靭さを感じます
刃先が精緻になり
刃こぼれも無くなっています
これは焼き戻しをする前の状態
メープルを削ってみましたが
削り肌が滑らかになりました
これは焼き戻しをする前の削り痕
30年ほど寝かせた
ヨーロッパ・スプルースも
問題なく削り上げることができました
その後、スパニッシュ・セダーなど
荒い削りを行ってみましたが
刃先はまだまだ大丈夫です
これで仕事で使えそうです