2015年2月19日木曜日

再生伊予砥を含め三種の中砥研ぎ比べ

再生伊予砥(ロ)と天然伊予砥
そして人造砥石#1500を研ぎ比べてみました


まず再生伊予砥


研いだ鉋は佐野勝二作と思われる


地鉄(じがね)の研ぎ傷も均一によく揃っています


拡大するとやや針気が見られますが
ほとんど問題ありません



こちらは天然伊予砥


肉眼で見ても上の再生伊予砥に比べると
やや粒度にムラがあるのが確認できます


研ぎ傷は上の再生伊予砥よりも粗めで
研ぎ傷も深いような気がします



最後にシャプトンの「刃の黒幕」#1500


一見、上の2丁と研ぎ傷の感じはよく似ていますが


拡大すると、このように
人造砥独特の深い傷が付いています



再度天然伊予砥で研いだ後
京丹波亀岡、神前産の仕上砥(戸前)で研いでみました


地鉄の研ぎ傷はやや粗めですが
鋼(はがね)はピカリと光るほどに研ぎ上がっています


これで充分仕事で使えます


中研ぎの傷をできるだけ細かくしていると
研ぎ面を狭くしていることもあり(9mmほど)
1分ほどでここまで研ぎ上がります
これには大変助かります


刃先の拡大画像(約180倍)
焼入れが強靭なので、刃先が細かく毀れていますが
削り肌はほんど問題ありません
これまでの経験から、鉋はこれくらいの方が
刃先が強靭で永切れします 


2015年2月16日月曜日

古い鍔鑿を入手 特殊ノミに作り変える

使い込まれた古い鍔鑿(つばのみ)を手に入れました


銘は清弘
これを楽器製作用の特殊ノミに
作り変えようと思います


まずグラインダーで成形


刃の幅は3mm





研ぎ上げました




試し削り
これはスプルース材


そしてセドロ材
柔らかい材は軽く削ることができますが


堅い黒檀材を削ると
やや滑る感があります


刃先も甘く



捲(ま)くれています
これはこの道具本来の用途から
細い部分が折れないように
多めの焼戻しが為されているためと思われます



そういうことなので先端部だけ
焼入れを行いました
炭素分が少なめの感じがしたので
できるだけ低い温度で焼入れをし
焼戻しは行いませんでした


結果、軽く堅材を削ることが出来るようになりましたが


刃先がこぼれていました


ということなので
オーブン・トースターで10分ほど焼戻しました
設定温度は180度弱
ここのところ焼戻しには
このトースターを使っていますが
今のところ問題なく行えています


やや切れが重くなりましたが
充分仕事で使えます


刃こぼれも無くなりました




2015年2月15日日曜日

再生伊予砥と天然伊予砥で義廣銘小鉋を研ぐ

試し研ぎのための再生伊予砥 IYO KISEKI(仮称)が
さゞれ銘砥さんから届きました

手に取ってまず感じたことは
カラカラッとしていて、いい音がしそうだな・・
ということです・・
ということで、指先で叩いてみたら
案の定、カンカンとしたいい音でありました
YouTubeに動画UPしました

これは据え方をちゃんとして
マレットで叩くともっと良い音が出ると思います
木琴ならぬ砥琴・・商品化できないかな・・?


IYO KISEKI は私が勝手に呼んでいるもので
KISEKI は奇跡であり、貴石、奇石、そして
この試作品が出来上がるまでの皆さん方の
ご苦労の「軌跡」の結晶の意味が込められています
左の2丁は以前さゞれ銘砥さんからお世話になった天然伊予砥ですが


これらを早速試してみました





動画で最初に使った再生伊予砥(ニ)
上の集合写真の下段・中央のもので
淡い桜色の美しいものです


さゞれ銘砥さんの説明では
5分ほど水に浸してから使うように、ということでしたが
動画撮影はブッツケ本番でやったので
吸水なしでやりました


それでも何とかいけましたかね・・

研ぎ心地は、このような硬さで
このような下り方(反応)は天然物には
まず無いな・・というのがまず感じたことでした
別の言い方で言えば
私にとって理想的な研ぎ感でありました


粒度がよく揃っていて
研ぎ傷が浅いのが肉眼でも分かります


研いだのは小熊寅三郎作、義廣銘の小鉋(身幅5cm)
鋼はヤスキ・ハガネ青紙で強靭な焼き入れ状態です



次に使ったのは上の集合写真
下段・右から二番目のもの(ロ)


これも美しい桜色ですが
最初のものよりはやや荒い手触り感です


その影響か、最初のものより良く反応します


研ぎ傷もやや粗いかなという感じです
その分、研磨力は強いです
実際に仕事で使うとしたら
最初にこれで研いで、次に上の(ニ)で
中研ぎを済ます、といった感じでしょうか

この砥石では他の寸八鉋を研いだ際に
研ぎ傷の拡大画像を撮影しました
鋼は炭素鋼

約180倍


参考までに
これは下に紹介した白い天然伊予砥で研いだもの

上の再生伊予砥より粒度にムラがあり
研ぎ傷の深さもこちらの方が
深い感じを受けます


これは人造砥石「刃の黒幕」#1500

人造砥石の研ぎ傷の特徴が顕著に現れています
粒度は揃っていますが、かなり深い研ぎ傷です

こうやって比べてみると、再生伊予砥は
かなり優れている、と言えるのではないでしょうか



動画に戻って、これは下段・右端のもの(ハ)
この画像では白く見えますが
実際は薄い桜色です


叩いている動画では
かなり締まった音質ですが


研ぎ感もカチリとしていて
反応は鈍め、刃物が弾かれる感があります


その分、研ぎ傷は緻密で
鋼はピカリと光りかけています



これは上段・右(ホ)
これもかなり締まっていて
研ぎ感も上と同様です




何とか砥汁が出ている・・
といったとろこ・・


さらに緻密な研ぎ上がりで
中研ぎの最終段階を超えている感じです


再生伊予砥、最後の1丁(イ)


カチカチで


ほとんど反応しません・・
ツルツルと滑るだけで
研いでいるというよりは磨いている
といった感じです


ツルツルと磨かれて
地鉄も光るほどまでになっています

この後、名倉としても使ってみましたが
かなり硬いので、それも無理な感じです
さゞれ銘砥さんは、金盤の換わりくらいですかね・・と
おっしゃってましたが、そんな感じです・・



そして、これは天然伊予砥です
粒度はやや粗め(#600ほど)




よく反応し、強い研磨力があります


再生伊予砥よりは粒度は粗いのですが
研ぎ上がりの感じはよく似ています



次は、上のものより粒度が細かいもの


純白の美しいものです


やや柔らかめで反応良く
心地よく研ぐことができます


この研ぎ傷も再生伊予砥に比べると
粒度のムラを感じます

以上、再生伊予砥を試させて頂きましたが
もし、これが安定的に供給されるようになったら
砥石界の革命と言っても過言ではないと思います

さゞれ銘砥さんによると、ここまでに至るには
かなりご苦労があったようで
製法については悩ましい部分が多くあるということです
ですから、我々使う側が気安く要求するのは気が引けるのですが
優れた人造中砥が世に「有る」 と 「無い」では
我々木工職人にとっては雲泥の差です
ぜひ実現させて頂きたい、と強く願いたいところです

1000年以上の歴史を誇る伊予砥が
まさに姿を変えて復活、再生しようとしている・・
この現実に立ち会えたことの幸運を
いま、しみじみと感じている次第であります

付記
その後、ボンドで固めた試作品も届きましたので
後日紹介したいと思います