2011年7月13日水曜日

中惣鉋 三態


昨日、中惣銘の鉋が届きました

 これがそうですが
これまでに二丁の中惣銘鉋を
入手していたので
これで三丁揃ったことになります


左端が最初に手に入れたもので(参照
鋼はスウェーデン鋼と思われます

中央のものは昨日紹介したもの
鋼はよく分かりません
裏の透き直しをしたときにも
場所によって火花の出方が違うのです

右のものは今回手に入れたもの
鋼は安来鋼の青紙と思われます


今回手に入れたものは
使い込まれて身が短くなっているので
このように台の差し込み部分を削り落して
身の出し入れの微調整をやり易くしました


手に入れた時点では
刃の研ぎと台の調整は
薄削り用に為されていました
ですから上の画像のように少し厚めに削ると


このように刃の両端の角が食い込み
広い板を削るには向いていません
これは楽器用の薄い板の場合
致命傷となるのです
台の調整も薄い板は削りにくい

また鋼が青紙のためか切れが重く
ハード・メープルを削るのは無理があります


楽器用のよく寝かされたスプルースを
削ってみましたが(参照


少し削っただけで
このように刃先が白くなってしまいました
これは普通に見られる青紙鋼の様子です
それに加え、身が短くなり
この部分の焼き入れが甘くなっているのか
鋼に強靭さを感じません


研いでみても
やはり鋼に強靭さがありません


 一応、薄板削り用に
研ぎ直してみました
仕上研ぎは先日紹介した
中世中山間府の天井巣板のみ使用


 このような、両端が薄くなっている
削り屑が出るのが理想です

ということで、総括すると
手許にある三丁の中惣鉋の内
優れているのは左の二丁で
右端の青紙鋼のものは
凡庸なものと云えます

時代も押金(裏金)の形態から
左端のものが最も古いのではないでしょうか
次に中央のもの、そして右端のものとなりそうです

鉋に詳しい方の話によると中惣銘の鉋には
東京鉋と新潟県柏崎市にある中惣という
古くからの大工道具の問屋が
作らせた同名の鉋があるそうです
東京鉋は鉋身が薄いのが特徴と
言われていますので、画像左の二丁が
その可能性があります


2 件のコメント:

masa さんのコメント...

初めてコメントさせていただきますmasaです。コメントというか質問なのですが、薄削りと、板を削る為の鉋台の調整にはどのような違いがあるのでしょうか?鉋刃の研ぎ方についてはわかるのですが、台の調整については考えてもわかりません。修行中の私にご教示していただけませんでしょうか。よろしくお願いします。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

コメントありがとうございます。
台の調整は人によって様々だと思いますが、
一般的に薄削り用の台の調整は刃口から台尻にかけて、
それから、刃口の頭側の透きを多めに取りることが多いようです。
ここで紹介している新たに入手したものもそうでした。
このような透かしの多い台で2mmほどの薄い板を削ると
板がバタつき削りにくく、厚みの調整がやりにくいのです。
場合によっては板が台無しになる場合もあります。
このことは考えての結果ではなく、30年以上実際に薄板を削ってきた経験から述べていることです。