2022年12月30日金曜日

匠家必用記 二章 番匠の祖神基本を起給ふ事

 

匠家必用記 上巻 の二章
番匠の祖神基本を起給ふ事
の読み下しを紹介しておきます
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忝(かたじけなく)も神国番匠の祖神其術(みち)の基本を起し給ふ。その本源尋るに天神七代に当りて伊弉諾尊(イザナギノミコト)、伊弉冉尊(イザナミノミコト)おのころ嶋に天降りましまし、天之瓊矛(あまのとほこ・ぬほこ)を以て国中の天柱(みはしら)とし、八尋の殿を化立給ふより此ことおこる。是神代天宮の始也。則此殿にましましてばんもつ(万物)を化生し給ふ。彼国中に御はしらを化立給ふ御神徳によって手置帆屓命(たをきぼらいのみこと)、彦狭知命(ひこさしりのみこと)に神始て番匠のみちの基本を起し、宮殿、屋宅及

諸のきざひを工出し給ひて、天下の至宝となる事挙げて、かぞへかたしかくのことごとの神功有によって、天照大神の上匠とし給ひて、きゅうでんをつくらしめ給ふ也。地神三代天津彦々火瓊瓊杵尊日向の高千穂のみねにあまくだり給いしときも此二神に命(みことのり)してきうでん(宮殿)を造らしむ。又出雲国杵築の大社御建立の始にも此二神を御工匠として宮殿並に船橋にも造りたもう也。是神代の事なれど何万年以前といふ事も計がたし。二神の御子孫次第に繁栄して神代の宮殿は皆此二神又御子孫の造り給ふ所也。人皇の始神武天皇大和国橿原に内裏を御造栄有し時に、二神の御孫を召て永く

其職にきざしたもう。此ゆへに代々の田姫をかいせんとす。素戔嗚尊これをきし給い、たちまちにいつくしみの御心を起し給ひて、其くるしみすくい給はんとほっし、大蛇をたいぢせんことをはかり給ふ。先あしなづちでなづちをして、毒酒を送らしめ大蛇にあたへたまへば、大気にゑいてねぶるそのとき素戔嗚尊たい(帯)し給ふ十握(とつか)の剣をぬひて大蛇をすだすだにきり給ふ。(此剣を天羽々斬のけんと云。又はおろちのあらませの剣と号く。今備前の国赤坂郡石上(いそのかみ)魂神社、又水ふる、又今大和のくに石上のかみやしろにまつるともいえり)。其尾に至りて剣の刃にしかけぬゆへを以て見給ふに、れいゐ成つるぎあり。あまのむら雲の御けんとなつく。神とうやまひ来るなり。又中比異コク(国)より

寺工来、てらしてるを送ることなど定て其人の姓も有べし。然れども日本のしんけいにあらざれば、論するにおよびばず。日本に生まれし人、十が九つかみのマゴナリ。かくのごとくの人はそれぞれの祖神を祭て常にうやまふべし。

印刷版に載せられている図


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