2014年10月29日水曜日

現代製鉋と昔の鉋 削り比べ

スウェーデン炭素鋼の寸六鉋が欲しいな・・と思ったので
古い鉋を探してみたが
なかなか良さそうなものが見つからなかった
仕方がないので現代製の新しいものを購入してみましたが
こちらでは仕事に使えるレベルではありませんでした・・
何故・・?  不思議です・・
右が現代製のスウェーデン炭素鋼の寸六
銘はモザイクをかけ伏せておきます
左は炭素鋼の古い長光銘寸六(参照

刃口の様子
右が現代製、左は昔の長光銘
刃角度はどちらも約28度

深い杢のカーリーメープルを削ってみました
これは現代製の寸六

こちらは長光・寸六

動画撮影後の刃先の様子(現代製)
そろそろ切れが止む感じです

長光・寸六
やや刃先が白く磨耗していますが
まだまだ切れは軽く健全です

その後深い逆目と杢が入っているウォルナット材を削ってみました
現代製のものは少し削っただけで
切れが止んでしまいました

こちらは長光・寸六
しばらく削りましたが、まだまだ刃先は健全です

2017年2月現在の様子
台の仕込み勾配は八分勾配(約37度)

刃の砥ぎ角度(刃角度)は約29度

2014年10月17日金曜日

水鉛 そして正倉院の木工品


兵庫県多可町にある
私設の石の博物館
「松内ミネラルコレクション」
青いシャツの御方が
館長の松内茂氏


個人のコレクションとは
思えない充実した内容に
驚きました
以下、ごく一部では
ありますが、個人的に
興味を惹かれたものを
紹介します


これは燐灰石

そして球顆流紋岩

この模様の美しさにしばし
見とれてしまいました

私が特に注目したのは
輝水鉛鉱
(モリブデナイトMoS2)で
このMoS2から硫黄分(S2)を
取り除いたものが
モリブデン(Mo)です
モリブデンは微量を
鋼に添加することにより
強靭な鋼を得ることが
できます(参照
このことは以前ブログでも
少し述べましたが(参照
この輝水鉛鉱が

兵庫県の出石いずし町や

丹波市山南さんなん

そして宍粟しそう市でも
採掘されていたのです

木工の世界では日本で
台鉋が使われ始めたのは
室町時代中頃から
ということになって
いるようですが(参照
これは歴史資料として
台鉋が確認されている
ということが
前提となっています
ところが、正倉院に
所蔵されている
木工品や楽器を見ると
参照
台鉋を使わなければ
作ることが不可能と
思われるものが
多く確認されるのです
参照

これはBryan Sentence
という研究家の叙述を
日本語に訳され
出版されたものですが
この中で、鉋は
古代ギリシャで発明され
ローマ時代に現代のものと
よく似た形に改良されたと
考えられている
としています

また、それは
かなり早い段階に
日本にもたらされたことは
充分にあり得ることだと
思われるのです

以下、正倉院の木工品を
少し紹介しておきます








これらの画像は紫紅社から
出版されている
から部分転載したものです
これらは状況証拠とも言え
木材としては加工が困難な
紫檀や黒檀など
これらを加工する刃物(鋼)
にはかなりの強靭さが必要で
特に台鉋のように刃先で
材料の表面を擦るものは
炭素鋼の刃ではかなり
困難を伴います
そういうことなので
現在ではハイス鋼などの
特殊鋼の刃を持った
鉋を使いますが
このハイス鋼には
先に紹介したモリブデンが
炭素鋼に添加されている
のですですから
正倉院に所蔵されている
木工品が作られた時代
(8世紀頃)の刃物にも
現在の特殊鋼のような
合金鋼があった可能性は
全くなかったとは
言えないのでは
ないでしょうか

鉄の歴史は5000年ほどはある
とされていますが(参照
その長い歴史の中で合金鋼が
作られるようになったのが
ここ100年ほどというのは考え難いと思うのです。
たとえば、日本刀に
関して言えば
日本刀は鎌倉時代に
最高レベルに達し
その後、現在に至るまで
その域に達することは
出来ていないとされています
このように
時代が古い方が技術が
優れていることもあるので
鋼に関してもその
可能性は充分にあるような
気がするのです

2014年10月12日日曜日

工房の様子 筑前琵琶の修復



丹波産マツタケを頂きました
ありがたや・・・





急な必要があって鉋刃を一挙9枚研ぎ・・



こちらは修復で預かった筑前琵琶
四絃の古いタイプ
所有者のおばあさんが使っていたものだということです
現在主力で使っているものと同様にしてほしいということで
五絃タイプにし、弦長を長くします


そういうことなので、棹(neck)と天神(head)を
作り換える必要があるのですが、幸い筑前琵琶は
棹と天神を抜くことが出来るので大助かり




棹と天神はセンノキ(栓木)材と思われます


2014年10月10日金曜日

端材のオブジェ 「おそ松くん」キャラからハタ坊・イヤミ・デカパン

久しぶりの端材のオブジェ
タイトルをハタ坊と付けたら
知人から次はイヤミかな・・というコメントがあったので


イヤミを作ってみました
シェ~のイヤミですね・・


ついでにこちらはデカパン
以上、おそ松くんの登場人物でした・・



これは19世紀ギターラプレヴォット・タイプの裏板の端材
ブラック・ウォルナットと木の実の殻
それとインドの工芸品を組み合わせました




タイトルは天空の仏陀・・?





これはオマケ


2014年10月4日土曜日

青紙鋼の義廣銘寸四の作者が判明


以前紹介した青紙鋼が使われた義廣銘の寸四鉋(身幅60mm)が
新潟与板の刃物鍛冶・小熊寅三郎氏によるもの
ということが判明しました
このときに入手した義廣銘の小鉋のことを
越後与板打刃物 匠会に問い合わせたところ
中野氏は義廣銘については承知していない
ということでしたので困っていたところ
新潟で刃物業を営んでいる御方からご教示頂きました
以下、その御方からのご教示の内容ですが

「この鉋刃は、小熊寅三郎さんのものです
すでにお亡くなりになり、15年は経つと思います
青紙1号鋼で、クローム・タングステンが多い古い鋼かもしれません
火花テストで、暗い赤色の火花が出るのでは!?
この鍛冶屋さんの鉋は、「まだ無いか!」と
亡くなってからも問い合わせが有りました
この銘の問屋さんは、すでに営業しておりませんが
訳あって在庫は飛散していますので、
見つけられたらお買い得だと思います
この銘の鉋は、寸8より寸6・寸4が多く作られたようです」
ということでした




小熊寅三郎氏の鉋身は
背に氏独特の縦筋が入っているということでした
そのことを認識して、こうして二枚の背を比較してみると
左の中野武夫氏作とされる小鉋も
同様の縦筋が確認できます
中野氏は義廣銘のことは承知していないということなので
この小鉋も小熊寅三郎氏が鍛えたものかもしれません

以前紹介した削り比べでも永切れ具合は
ほぼ同様のものがあり
どちらもかなり優秀なので、その可能性は大と言えます