2015年2月15日日曜日

再生伊予砥と天然伊予砥で義廣銘小鉋を研ぐ

試し研ぎのための再生伊予砥
 IYO KISEKI(仮称)が
さゞれ銘砥さんから届きました

手に取ってまず感じたことは
カラカラッとしていて
いい音がしそうだな・・
ということです・・
ということで、指先で
叩いてみたら
案の定、カンカンとした
いい音でありました

これは据え方をちゃんとして
マレットで叩くともっと良い音が出ると思います
木琴ならぬ砥琴・・
商品化できないかな・・?

IYO KISEKI は私が勝手に
呼んでいるもので
KISEKI は奇跡であり
貴石、奇石、そして
この試作品が出来上がるまでの
皆様方のご苦労の「軌跡」の
結晶の意味が込められています
左の2丁は以前さゞれ銘砥さんからお世話になった
天然伊予砥です

これらを早速試してみました


動画で最初に使った再生伊予砥(ニ)
上の集合写真の
下段・中央のもので
淡い桜色の美しいものです

さゞれ銘砥さんの説明では
5分ほど水に浸してから使うように、ということでしたが
動画撮影はブッツケ本番でやったので吸水なしでやりました

それでも何とか
いけましたかね・・

研ぎ心地は、このような硬さで
このような下り方(反応)は
天然物にはまず無いな・・
というのがまず感じたことでした
別の言い方で言えば
私にとって理想的な
研ぎ感でありました

粒度がよく揃っていて
研ぎ傷が浅いのが
肉眼でも分かります

研いだのは小熊寅三郎作、義廣銘の小鉋(身幅5cm)
鋼はヤスキ・ハガネ青紙で強靭な焼き入れ状態です

次に使ったのは上の集合写真
下段・右から二番目のもの
(ロ)

これも美しい桜色ですが
最初のものよりはやや荒い
手触り感です

その影響か、最初のものより
良く反応します

研ぎ傷もやや粗いかな
という感じです
その分、研磨力は強いです
実際に仕事で使うとしたら
最初にこれで研いで
次に上の(ニ)で
中研ぎを済ます
といった感じでしょうか

この砥石では他の寸八鉋を
研いだ際に
研ぎ傷の拡大画像を撮影しました

鋼は炭素鋼

約180倍

参考までに
これは下に紹介した
白い天然伊予砥で研いだもの

上の再生伊予砥より
粒度にムラがあり
研ぎ傷の深さもこちらの方が
深い感じを受けます

これは人造砥石
「刃の黒幕」1500番

人造砥石の研ぎ傷の特徴が
顕著に現れています
粒度は揃っていますが
かなり深い研ぎ傷です

こうやって比べてみると
再生伊予砥はかなり優れている
と言えるのではないでしょうか

動画に戻って
これは下段・右端のもの(ハ)
この画像では白く見えますが
実際は薄い桜色です

叩いている動画では
かなり締まった音質ですが

研ぎ感もカチリとしていて
反応は鈍め、刃物が弾かれる
感があります

その分、研ぎ傷は緻密で
鋼はピカリと光りかけています

これは上段・右(ホ)
これもかなり締まっていて
研ぎ感も上と同様です


何とか砥汁が出ている・・
といったとろこ・・

さらに緻密な研ぎ上がりで
中研ぎの最終段階を
超えている感じです

再生伊予砥、最後の1丁(イ)

カチカチで

ほとんど反応しません・・
ツルツルと滑るだけで
研いでいるというよりは
磨いているといった感じです

ツルツルと磨かれて
地鉄も光るほどまでに
なっています

この後、名倉としても
使ってみましたが
かなり硬いので
それも無理な感じです
さゞれ銘砥さんは
金盤の代わりくらい
ですかね・・と
おっしゃってましたが
そんな感じです・・

そして、これは天然伊予砥です
粒度はやや粗め(600番ほど)


よく反応し
強い研磨力があります

再生伊予砥よりは
粒度は粗いのですが
研ぎ上がりの感じはよく
似ています

次は、上のものより
粒度が細かいもの

純白の美しいものです

やや柔らかめで反応良く
心地よく研ぐことができます

この研ぎ傷も再生伊予砥に
比べると
粒度のムラを感じます

以上、再生伊予砥を
試させて頂きましたが
もし、これが安定的に
供給されるようになったら
砥石界の革命と言っても
過言ではないと思います

さゞれ銘砥さんによると
ここまでに至るには
かなりご苦労があったようで
製法については悩ましい部分が
多くあるということです
ですから、我々使う側が気安く
要求するのは気が引けるのですが
優れた人造中砥が世に
「有る」 と 「無い」では
我々木工職人にとっては
雲泥の差です
ぜひ実現させて頂きたい
と強く願いたいところです

1000年以上の歴史を誇る伊予砥が
まさに姿を変えて復活
再生しようとしている・・
この現実に立ち会えたことの
幸運をいま、しみじみと
感じている次第であります

付記
その後、ボンドで固めた試作品も届きましたので
後日紹介したいと思います

2015年2月14日土曜日

関東産天然砥石 深沢青砥 赤沢仕上砥

 関東方面の天然砥石を調査していらっしゃるTさんから
近況報告を頂きました

今回は八溝山地の南部地域に行かれたそうです

まず行かれたのは
大泉砥(別名 荒内砥)の
採掘地である堤上と大泉
堤上では最後まで
商売をしておられた
I氏宅を訪ね
貴重な最後の一本を見せて
もらったということです

次に訪ねた大泉のT氏宅に
保管されていた大泉砥

これは大泉砥の原石
その後、少し離れた
栃木県深沢のN氏宅を
訪ねたそうです
先々代は京都亀岡出身で
この地に良い砥石があると
聞いて採掘を
始めたということです
家の裏山が荒内山という
ことから「荒内砥」の名が
付いたそうで
こういった話はたいへん
貴重です
また、三谷と大泉で採れた
砥石は性質が違うそうで
ここではNさんの他に
下館の人も掘っていた
ということです
Nさんのところでは
山からレールで下ろし
家で電動鋸で加工
また佐渡や福島の砥石原石を
貨車で運んで、ここで加工し
東京に販売していたそうです


そしてこちらは
旧七会村上赤沢の
仕上げ砥石





ありがたいことに
これらの砥石を送って
下さいました
以下、その試し研ぎの様子です
YouTubeに動画をUP
しておりますので参照下さい

この動画は途中でカメラの
バッテリーが消耗し
最後の部分が途中で
切れてしまいました
お詫びいたします

動画で最初に使ったのは
上の画像の左端の中砥
栃木県茂木町
深沢産の青砥です
 

以前紹介した大泉砥とされる
中砥によく似ています
おそらく同じ産地の
ものでしょう
ということは
左のものは大泉砥ではなく
深沢産青砥ということに
なりますか・・

研いだ感じや

研ぎ上がりもよく似ています
粒度はやや粗めですが
(600番程度)
砥目がよく揃っていて
ひどい針気もないので
優秀な中砥と言えます

動画で次に使った砥石は
上の画像の左から2番目の
深沢産の中砥

これも同様のものです


研いだ感じや

研ぎ上がりも同様です

次に、これも深沢産
ということですが
上の2丁とは質感
色あいが違います

画像では丹波産の
青砥のようにも見えますが
質感は明らかに違い
粒度も粗く見えます

ところが研いでみると
見た目よりも緻密で

傷が浅く、鋼は研ぎ傷が
見えないほどに
研ぎ上がります
これには驚きました・・

次も同じ深沢砥ですが
これは研ぎ面が
板目になっているものです

柾目面の厚みがないので
このように板目を
研ぎ面にした
ということです

動画では砥汁がほとんど
出ていませんが
研ぎ応えはありました

以前紹介したことがありますが(参照
板目面の青砥も
使い方によっては
役に立つものです
柾目面のように
研磨力はなくても
このように研ぎ傷が浅く
中研ぎの最終段階まで
持っていくことが出来ます

これは埼玉県の滑川で
採集されたものだそうです
かなり違った
色あいと質感です

青砥のように層状の
粘板岩質ではなく
三河名倉砥のような
凝灰岩質です

程よい硬さで反応も悪くはなく
心地よく研ぐことができますが
研磨力はあまり感じません

その分、研ぎ傷が浅いので
中研ぎの最終段階として
使えそうです
鋼はピカリと光りかけています

最後に茨城県七会村
上赤沢産の仕上砥石です
これはこちらで紹介している
明治十年に行われた
「第一回内国勧業博覧会」に
出品された砥石の報告書に
記載されているものです

残念ながらこのサンプルは
ガリガリの石質で
筋も硬いので

このように仕上砥とは
言い難いものですが
上質のものもあったものと
期待したいところです・・

こちらは上のものよりは
良い状態ですが
部分的に風化の具合が
違っていて
研ぐには難しいところが
ありました

できるだけ良い部分で
研いだ状態ですが
粗い筋がやや目立ちます
これも上質のもので
研いでみたいところです
以上、貴重な関東産の
天然砥石を紹介しました
これらの砥石を提供下さった
Tさんに
改めて御礼申し上げます