以前、天然中砥石の接着について紹介したことがありますが
今回は荒めの砥石の接着について紹介しておきます
この画像の砥石は、現在私が唯一刃付研ぎとして使っている
人造砥石、SHAPTONシャプトンの「刃の黒幕」grit320です
この砥石は荒研ぎとして頻繁に使うので
これまでかなり新調してきましたが
刃の黒幕は厚さが薄いので
私はこのように新しい砥石を
使い減ったものに接着しています
この時の接着剤はゼリー状の瞬間接着剤を使っています
中砥は低粘度のものが有効ですが
粗めの砥石は低粘度ではちょっと心配なので
ゼリー状のものを使っています
木工用の瞬間接着剤(ゼリー状)は
木を接着する際はやや時間がかかる場合がありますが
砥石の場合は数秒であっという間に接着完了します
塗る場合はこの画像の白い線のように塗っています
さて、こちらは今回手に入れた
古い寸八鉋身(身幅73mm)、銘は清仁
この銘についてご存知の方はぜひご教示願います
鋼は特殊鋼系ですが、裏出しと研ぎを行った印象は
焼き入れはそれほど強靭ではないようですが
強い粘りを感じました
台尻にはこのような刻印があります
刃角度がかなり低く研がれていたので
刃先から1mmほどを約30度に修正
台も長い間保管されていた様子で
使われた形跡はありません
興味深いのは身の仕込み角度ですが
57度もあります・・
これで二枚刃になっているのは
どういう目的で作られたのでしょうか・・
これまでの経験から、これはかなり使うのが難しい気がします
手前は通常の仕込みのもの(義廣寸四・身幅60mm)で
約40度(八分五厘勾配でしょうか・・参照下さい)
とりあえず台の仕込みを調整し
台も全体に削って汚れを除去しました
さっそく仕事で使ってみましたが
案の定、使うのに苦労しました
身の仕込勾配が大きいので
厚めに削るのが難しく、逆目を止めるための
押金(裏金)の刃先への寄せ具合が確認しにくいのです
鉋屑が縮れていますが、これも仕込勾配が大きいためです
逆目を止めるだけの目的ならば
90度仕込みの立鉋がよいのですが
立鉋では薄く削ることしかできず
厚みを減らしながら深い逆目を止めることはできません
また刃先の磨耗が激しいので
ギター1台分を仕上げるには
何度も研ぐ必要があるでしょう
それから、立鉋にもっていくまでの
下削りといいますか、中仕工削りに気を遣う必要もあります
さて、清仁銘・寸八で削ったローズウッドですが
何とか深い逆目を止めることは出来ましたが
このように仕込み角度が大きいと
厚めに削りながら深い逆目を止めることは
ほとんど不可能と言っていいでしょう・・
ギターの横板1枚を仕上た後の
刃先の状態ですが
ほとんど変化はありません
刃先の強靭さは期待できそうです
これは、現在ローズウッドの仕上げ削りに使っている
義廣銘(参照)の寸四ですが
上の清仁の鉋屑よりも厚めに削っていますが
縮れはなく
しかも逆目もほとんど止まっています
このように、実際に仕事で使うには
出来るだけ軽い削りで厚みを減らし
しかも深い逆目を止めることができる必要があるのです