2010年5月9日日曜日

新作 平家琵琶


平家琵琶が出来上がりました
銘は平家詞曲相伝者の
鈴木まどかさんにお願いし
「月影」と命名して頂きました

(右クリックで別タブ又は別ウンドウで開くと
大きな画像を見ることができます)

腹板(表板)はタモの一枚板
覆手は紫檀(シタン)柱(じ)は南米産のアマレロ
ツゲ材によく似ています
琵琶各部の名称についてはこちらを参照ください


甲又は槽(裏板)は紅花梨(カリン)の一枚板
海老尾はツゲ、鶴首はアフリカ産のバンガバンガ
これは一見、鉄刀木(タガヤサン)や
ウェンジのようにも見えます


撥面は薄い馬の革を使い
平家物語の福原遷都を題材にした絵を描きました
手前の赤い鳥居は1180年の
福原遷都の際に勧請したと
される厳島神社です

これは、広島県宮島の
厳島神社に所蔵されている
安徳天皇の調度品
とされている
檜扇(ひおうぎ)です
撥面に安徳天皇が乗った
牛車(ぎっしゃ)を
どのように描こうか
ずいぶん悩みましたが
この檜扇に描き
それがヒラヒラと宙に
舞っているように
表現することにしました

それから、牛車と従者を
後ろ姿にし
福原遷都後の平家の
暗い行く末を
暗示 させてみました・・
とはいえ、あまり暗さが出るといやなので
できるだけ朗らかな
表現にしました
牛もかわいらしく・・

撥面の月もそれを感じさせるものにしたいと考え
素材は黒蝶貝を選びました
楽器を立てた状態で見た
撥面の月と
横にして見た月の色が違うのが
分かってもらえると思いますが
蝶貝やアワビ貝のような
耀貝の種類は
光の当たり具合で
様々な表情になるのです


黒蝶貝は外側に
黒っぽい色があり
内側はほとんど白です
外側の黒い部分は薄い層に
なっているので
少し削ると消えてしまいます
ですから、撥面の月を
出来るだけ
平面に取るのに苦労しました
今回の琵琶製作で最も苦労した
作業だったかもしれません
月の大きさは
直径4cmほどですが
この大きさを平面で取れる貝の大きさは
20cm以上は必要です
黒蝶貝でこれだけ大きなものは
まずお目にかかれません
上の写真の残りで
直径4cmの平面は
あと1枚しか取れないでしょう

今回の琵琶のテーマは
神戸でもあります
ですから、落帯には波だけを
描きました

これは撥(ばち)ですね
ツゲの木で作りました

平家琵琶製作工程

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