江戸時代中頃の浮世絵画家
鍬形蕙斎が描いた
今様職人尽絵詞の大工の図
その文句の部分の最初の字を
恒和出版から出されている
本の解説では
鉇(ヤリガンナ)としています
どう見てもそう思うのですが
勉誠出版から
出されているものでは
「鉇」を「銫」とし、解説では銫は鉋kannaと同じとしています。銫という字にはカンナとい意味もあるようですが、蕙斎の文字はどう見ても鉇です。ですが、描かれている絵は台鉋を使っているので蕙斎が文字を間違えているか、当時は台鉋のことを鉇と書いていたかどちらか、ということになります。
江戸時代中頃に出された「和漢三才図会」では鉋は「つきがんな」とルビが振ってあります。
またヤリガンナには
鐁が当てられています
真実はいかに・・
また、同じく
江戸時代中頃宝暦五年
1755年に出版された
鉇をカンナとしています
ヤリガンナについては、今様職人尽絵詞の大工のところに書き込まれている文句「鉇yarigannaは鈍きがよく候ぞ」。これは有名な徒然草の第二百二十九段「よき細工は、少し鈍き刀を使うといふ妙観が刀はいたく立たず」を彷彿とさせます。
このことは宮大工棟梁、故・西岡常一氏も同じことを言っていて、氏が槍鉋を初めて作ってもらったとき、鋼haganeが硬く研ぎにくく、その割に切れが悪いということで、試行錯誤の末、昔の和釘を鋼に混ぜて刀工に鍛えてもらったら、ようやく切れのよい鉇が出来上がったということです。
その刃は柔らかく粘りがあり研ぎやすいものだったと西岡棟梁は口にされています。
そのことは私も小刀で
経験してきました
刃物というものは
たいへん不思議です
これは古い刀で作った小刀
日本刀は鋼の炭素分が
木工用刃物の鋼よりも
炭素分が少ない影響か
研ぎやすく、切れも軽い