2022年11月15日火曜日

改造小刀 そして鉋


古い刀を小刀に改造


仕事で使ってみました

こちらは寸八ハイス鋼
ローズウッド薄板削り
ローズウッド特有の交錯した
逆目もほぼ止まっています

以前紹介しましたが
和漢三才図会では
鉋は「つきがんな」と
ルビが振ってあります


江戸時代に描かれた鉋は

引いて使われていますが
大陸では押して削るので
中国から日本に
伝わってきた鉋は
つき(突き)がんなと
呼ばれていたものと思われ
それを日本では
引いて使うように
なったものと思われます

押して削る中国の鉋


西洋鉋も押して使う
因みに、鋸(のこぎり)は
日本では引いて使いますが
西洋では押して使います

2022年11月13日日曜日

美しい装飾 そして琵琶を渡す作法

 

素晴らしい装飾の
19世紀ギター
とても真似できません






弦長短めのギターですが
ナットの弦幅は37mm弱
(通常は39mm前後)
現代のギターは
標準的なもので43mm前後

ブリッジの弦幅は63mm
これも広めで
通常は60mmが多い
現代のギターは57mm前後


こちらは
江戸時代に出版された
女用訓蒙図彙
joyoukunmouzui 
ここでは琵琶を渡すときの
作法も説明されていますが
よく状況が掴めません

「琵琶は弾くときのやうに抱きて、頸を左の手にて縦に取りなし、右の手を撥面の上を越して磯の方を抱えてだい(台か?)の方を畳に立てて押し廻して琵琶を仰向けて海老の尾の方を左になるやうに渡すべし」(意味が掴みやすいように適宜こちらで漢字に換えた平仮名もあります)。「海老の尾の方を左になるやうに」は琵琶を受け取る相手から見て左、ということでしょうか・・?


因みにこれらは
江戸時代に描かれた
女性が弾いている琵琶の絵

これは鎌倉時代に
描かれたもの

2022年11月11日金曜日

紅葉と朝顔 そして窓鋸


今朝の工房裏

紅葉とアサガオ

さすがに朝顔の花は小さい

長年探し求めていた
細身の窓鋸とようやく
巡り会えた
刃渡り一尺一寸五分
約350mm



試し挽き動画

銘は中屋長兵衛か・・
この銘は堤章氏の著書
「会津の鋸鍛冶」では
取り上げられていません

2022年11月9日水曜日

鉇 銫 鐁 槍鉋 ヤリガンナ


江戸時代中頃の浮世絵画家
鍬形蕙斎が描いた
今様職人尽絵詞の大工の図


その文句の部分の最初の字を

恒和出版から出されている
本の解説では

鉇(ヤリガンナ)としています
どう見てもそう思うのですが

勉誠出版から
出されているものでは

「鉇」を「銫」とし、解説では銫は鉋kannaと同じとしています。銫という字にはカンナとい意味もあるようですが、蕙斎の文字はどう見ても鉇です。ですが、描かれている絵は台鉋を使っているので蕙斎が文字を間違えているか、当時は台鉋のことを鉇と書いていたかどちらか、ということになります。

江戸時代中頃に出された「和漢三才図会」では鉋は「つきがんな」とルビが振ってあります。

またヤリガンナには
鐁が当てられています
真実はいかに・・





また、同じく
江戸時代中頃宝暦五年
1755年に出版された

鉇をカンナとしています



ヤリガンナについては、今様職人尽絵詞の大工のところに書き込まれている文句「鉇yarigannaは鈍きがよく候ぞ」。これは有名な徒然草の第二百二十九段「よき細工は、少し鈍き刀を使うといふ妙観が刀はいたく立たず」を彷彿とさせます。
このことは宮大工棟梁、故・西岡常一氏も同じことを言っていて、氏が槍鉋を初めて作ってもらったとき、鋼haganeが硬く研ぎにくく、その割に切れが悪いということで、試行錯誤の末、昔の和釘を鋼に混ぜて刀工に鍛えてもらったら、ようやく切れのよい鉇が出来上がったということです。



その刃は柔らかく粘りがあり研ぎやすいものだったと西岡棟梁は口にされています。

そのことは私も小刀で
経験してきました
刃物というものは
たいへん不思議です

これは古い刀で作った小刀
日本刀は鋼の炭素分が
木工用刃物の鋼よりも
炭素分が少ない影響か
研ぎやすく、切れも軽い