2011年7月27日水曜日

青紙鋼 名誉挽回


なかなか雰囲気のよい鉋身を手に入れました

研いでみると裏押しの感じも含め
強靭で、しかもしっかりと粘る印象を受けました
だいたいこのような研ぎ感の鉋身は
良いものが多いのですが


これは大当たりでした
鋼は安来鋼の青紙系と思われるのですが
青紙にしては火花の量が多い感じもします・・




銘に「錦」の字が一字切られているだけで
作者の手掛かりはありません・・
どなたかご存じの方がいらっしゃいましたら
ぜひご教示をお願いいたします




例のガンコな不明材をまず削ってみましたが
切れ味軽く、驚くほど永切れします


一枚刃ですが
なんとか逆目も止めることができました


の刃先の状態でもまだまだ切れは止んでいません
このガンコな不明材を削ったなかでは
永切れはトップクラスで
藤井刀匠鉋や石社(いしこそ)鉋といい勝負です

2011年7月23日土曜日

一枚刃の鉋 勢揃い


以前使っていた1丁の寸八鉋が
あまりに刃が甘かったので
焼き入れと焼き戻しをやり直しました
銘は「やいば」、鋼は安来鋼青紙
また、これを機に寸八の小振りの台の
一枚刃が欲しかったので台も作り換えました

試みに柘植(ツゲ)によく似た
アマレロ材を使ってみました






ツゲ材に似ているといっても
質はやや粗雑で、削り面を台直し鉋で
横擦りをすると表面が荒れてしまいます
それでも滑り具合はいいので何とか使えるでしょう


 ということで、早速仕事で使ってみました
製作中の二台のラプレヴォット・タイプの
響板(30年ほど寝かせたヨーロッパ・スプルース)
荒削りしてみました
以前とは比べものにならないほど切れ味よく
また永切れするようになりました


よく寝かせたスプルースは
鉋の刃先の摩耗が激しいのですが
二台分の響板を削ることができれば合格です


焼き入れをやり直してからは
砥当たりに強靭さが増し、鋼(はがね)は冴え
地鉄(じがね)には厚く地沸(じにえ)が付きました
また、刃と地鉄の境には直刃(すぐは)の刃文(はもん)
ようなものが現れ、刃の中に長い銀筋も2本出ました


研ぎ直して例のガンコな不明材を削ってみましたが


逆目を止めることは出来ませんでしたが
普通に削ることができました
以前は全く刃が立たなかったのです


刃先は少々のことではやられません
これならば十分仕事で使えます

この鉋は荒い仕事でも使うので
刃口は広めにしていますが
ガンコな不明材のような強烈な逆目を止めるには
刃口はもっと狭くする必要があります


たとえばこの位の刃口ならば
刃の状態が良ければ一枚刃でも
逆目を止めることができま



ということで、一枚刃の鉋が新たに加わりました


2011年7月22日金曜日

ブビンガ材の削り比べ

製作中のマリアハープ4台のブリッジを
ブビンガ材で作ったので
この時とばかりに、鉋の削り比べを行いました
紹介した木材図鑑サイトで「加工は困難」と
説明されているように、堅木の中では
ガンコな部類に入りますが
以前紹介したホンジュラス・ローズウッド(参照
ほどではありません
今回使った材は木繊維が複雑に交錯し
あちこちに強烈な逆目があります

この画像に見られるように
長さ約25cm、幅1cm、高さ1,5cmの角材を
断面が三角形になるように鉋で削っていきます
これを4本作りますが(参照
同じ材質の角材から同じ形を作ることになりますから
削る量はほぼ同じということになり
鉋の削り比べを行うにはいい機会です

最初に使ったのは燕鋼の小鉋
身幅42mmで刃角度は25度
逆目が強烈なので押金はよく効かしています


1本仕上げた刃先の状態です
やや摩耗した程度で、まだまだ切れます



次に「も作」銘・白紙鋼の小鉋
身幅42mm、刃角度28度
刃角度は上の燕鋼よりは大きいものの
切れは燕鋼よりも軽いです

1本仕上げた状態は
刃先の摩耗は上の燕鋼より顕著ですが
まだまだ切れます



これはハイス鋼の身幅55mmのもの
刃角度は29度
この鉋は黒檀を主に削っているものですが(参照
台の口にステンレスを張っているためか
切れは軽く感じます


この鉋は研ぎ上げた状態から
使ったわけではありませんが
使い始めとほとんど変化はありません



最後に青紙鋼のものをと思いましたが
青紙の小鉋は手許になく
仕方がないので前回使った「来一郎」銘の
寸六(身幅65mm)を使いました
刃角度26度
使い始めは軽い切れで好調でしたが
間もなく、材に切れ込んでいる感覚が薄れ
滑るような感じになりました

刃先が細かく変形し磨耗しています




ということで、4丁の鉋を比べた結果
切れの鋭さと軽さでは「も作」の白紙鋼が筆頭
永切れではハイス鋼
燕鋼は切れの軽さはハイスに劣りました
青紙鋼の「来一郎」銘は刃角度のことも
考慮しなければなりませんが
一般的に言われているように
青紙鋼は白紙鋼よりも永切れするというのは
一概には言えないということになります







2011年7月20日水曜日

寸六鉋4丁合わせ(削り比べ)

今日は19世紀ギター、ラプレヴォット・タイプ
裏板の接着面を仕上げました
この面を基準に裏板をヴァイオリンのような
膨らみの付いた形状に仕上げていきます

荒削りをする際に
寸六鉋4丁で削り比べを行いました
最初に「も作」銘の身幅60mmのもの
鋼は炭素鋼系、安来鋼・白紙と思われます
以前述べましたが、メープルのように
粘りの強い材を削るには、切れの軽い
炭素鋼の鉋を私は主に使います
この鉋は刃角度が28度ほどあるので
メープルを削るとやや重く感じます





次に「中惣」銘の身幅63mm、刃角度約26度
鋼は炭素鋼系のスウェーデン鋼と思われます
軽い切れで永切れします





これは初代・初弘、身幅65mm
刃角度は蛤(はまぐり)刃で約24度
鋼は炭素鋼系ですが種類は分かりません


手に入れた状態では
台に乾性油が沁み込ませてあり
それが硬化していた状態でしたが
その手触りがベタベタした感じで
使い難かったので、台を交換しました


これも軽い切れで永切れします
中惣と甲乙付け難い感じです



 これは上の2丁とほぼ同じ時代の鉋で
「来一郎」銘の身幅65mmのものです
鋼は安来鋼・青紙と思われます
この鉋も入手した時点では削り肌がザラつき
研ぎ上げた状態でも刃先に細かい欠けが
目立ったので、焼き戻しをしたものです
その後は調子よく、削り肌も美しくなりました




さて、これからは仕上削りですが
再び藤井刀匠作の玉鋼・寸八(身幅72mm)
登場してもらいました
昨日スプルースを削った状態で(参照
使い始めましたが、軽い切れで
驚くほど永切れします

ラプレヴォットの裏板は、外側が
不安定な形状をしているので
最後の仕上げは片手で鉋を持って
削らなければなりません
ですから、鉋がよく切れると大変助かるのです




このように摩耗し尽している感じなのですが
まだまだ切れは止んでいないのです
藤井鉋 おそるべし・・


これは藤井作玉鋼鉋と交互に
仕上削りに使った東郷鋼のものですが
研ぎ上げた状態から使ったにもかかわらず
早くもこのように刃先が摩耗してしまいました


仕上がった裏板の接着面



2011年7月19日火曜日

炭素鋼寸八鉋合わせ


身が短い鉋を納めるところに
木片を貼り付けて
鉋を納めやすいようにしました
ついでに、この木片を加工する際に
四丁の鉋で削り比べを行ってみました

使った木は建築用のスプルース
材質は重めで粘りのあるものです
こようなスプルースはクラシックギター用の
響板や部材としては使えませんので
こういった、作業場の造作などに使っています


 長さ30cm、幅8cmほど、厚み22mmの
木片を荒削りしていきます
削り屑の厚さはコピー用紙ほどです

まず、初代か二代か不明の炭素鋼系寸八
一枚刃(参照)の登場です
刃角度は約24度
焼き戻しをしてからは、この鉋は好調で
刃角度の影響もあると思いますが粗削りでも軽く
調子よく削ることができます


 削り肌も荒削りとも思えない滑らかさです



 次に同じく昨日登場した炭素鋼系一枚刃の寸八
石社鉋です(刃角度28度)
初弘に比べるとかなり切れが重く感じます
刃角度の影響でしょうか・・


削り肌は美しく問題ありません



これも昨日登場した
1977年製スウェーデン鋼の
無銘・常三郎寸八 刃角度は約27度


この鉋独特の鋭い切れ味で
心地よく削ることができます



藤井刀匠作の玉鋼寸八の登場です
刃角度28度


これも軽い切れですが上の常三郎鉋よりは
切れ味に粘りを感じます
切れの軽さは常三郎とほとんど同じでしょうか・・
ということは、石社一枚刃とは刃角度が同じなので
石社鉋は切れが重いということになります

この後、木片を仕上げるまで
常三郎スウェーデン鋼と
藤井刀匠玉鋼を交互に使っていきました
木片が仕上がった時点の
スウェーデン鋼の刃先の様子
切れはまだまだ止んでいません


こちらは玉鋼の刃先
こちらもまだまだ健在です

交互に使っても切れ味の違いは明瞭ですが
切れの軽さはほぼ同じ感じを受けます
甲乙付け難しといったところでしょうか・・


以上、炭素鋼系寸八4丁による削り合わせの結果
左端の初弘が最も優れていました
次にその右のスウェーデン鋼・常三郎
と藤井刀匠・玉鋼が並んで次席
右端の石社鉋は今回のスプルースでは
他のものに水を開けられてしまいました