2015年4月7日火曜日

茨城県産赤沢砥を使って粉末ハイス鉋を研ぎ上げる

先日、5日に紹介した茨城県産赤沢砥を使って
粉末ハイス鋼(powder HSS)の鉋を研いでみました
YouTube動画参照下さい

動画で最初に使ったのは
現在中砥ぎの主力として使っている
沼田・虎砥の一種とされている天然中砥

この砥石は刃物を選ばず良く反応してくれます
粒度は粗めですが研ぎ傷は浅いので
後の研ぎが楽に行えます

ハイス鋼は中砥ぎをよく行っていないと
仕上げ研ぎに苦労するので
次に先般手に入れた伊予砥を使ってみました

刃先部分はだいたい前段階の研ぎ傷が消えました

次に5日の重利二寸研ぎにも使った
三河名倉(八重ボタン層と思われるもの)

これで次の仕上げ研ぎがかなり楽になります

最初に使ったのは程よい硬さの赤沢砥

1分ほど研いだ状態
粉末ハイス鋼にも充分威力を発揮してくれます
通常ならば、この研ぎ上がりでしたら仕事で使います

動画で最後に使った硬めの赤沢砥


これも1分ほど研いだ状態
地・刃ともにさらに冴えました

刃の研ぎ角度は約28度
ハイス鉋は刃角度を高く(例えば30度)すると
本黒檀などの堅材を削った際
刃先が滑って削れない場合があるので
私は刃角度は通常の鉋と同じにしています

刃先の拡大画像(約180倍)
粉末ハイスの刃は強靭なので仕上砥の傷が付き難いのか
粗い金属粒子に紛れて傷が見えないのか
通常の鋼の刃先とは随分と様子が違って見えます

こちらは同じ2種類の赤沢砥で研ぎ上げた
古い会津鉋、重利二寸(鋼は玉鋼)
これも最終仕上げは1分ほど研いだ状態



さっそく仕事で使ってみました
指板材(本黒檀)を削っているところ


台は市販されている状態で
鉋身の仕込み角度も通常と同じで
ほぼ八分勾配(約39度 参照)になっています


ニカワ接着完了。
こちらは特注小型モダン・タイプ、弦長630mm

こちらは19世紀ギター、特注ラコート・タイプ
弦長630mm

2015年4月5日日曜日

茨城県産赤沢砥で会津鉋重利二寸を研ぎ上げる

前回紹介した茨城県産の赤沢仕上砥
座りが悪かったので
この硬口の大きめのものは木の座布団を・・




やや硬めのものは木の台に
シリコンコークで接着しました


この二丁の赤沢産仕上砥を使って
古い会津鉋、重利銘二寸鉋を研ぎ上げてみました


動画で最初に使ったのは
栃木県産深沢砥


やや柔らかめで強い研磨力があります


研ぎ傷が均一で丹波産青砥によく見られる
針気はほとんどありません
粒度は約#600


次に使ったのは浄教寺砥
粒度約#1000




これも粒度がよく揃っています


そして仕上砥ぎの最初は
やや硬めの赤沢砥
硬めながらまろやかな研ぎ感で
心地よく研ぐことができます


しかも鋼はほぼ鏡面に
地鉄(じがね)もかなり緻密に研ぎ上がります
これで約1分半研いだ状態です
これで充分仕事で使えますが


試し研ぎなので 
大判の硬口で最終仕上げを行いました


1分ほど研いだ状態
地・刃ともに一段と冴えました


刃先の拡大画像(約180倍)
玉鋼の特徴がよく表れた研ぎ上がりです

中砥ぎでもう少し細かい砥石までもっていくと
どういう結果になるのか
次回試してみたいと思います


参考までに、これは裏の拡大画像(約180倍)







2015年4月2日木曜日

茨城県産赤沢砥 これは素晴しい!

関東の天然砥石の調査をしていらっしゃるTさんから
新たに採掘された赤沢砥が届きました
以前紹介したものと違い、かなり上質なものです

サイズも立派なもので一緒に撮影した
寸八鉋が小さく見えるほどです




反対面の様子


採掘の様子は名古屋砥泥会のブログで紹介されています
参照下さい



さっそく試し研ぎを行いました
今回もたまたま八分(刃幅24mm)の薄ノミを
研ぐ必要があったので、それを研いでみました
まず中砥ぎとして以前紹介した栃木県深沢産の青砥





次に愛知県産三河名倉砥で研ぎ傷を細かくしました
層は八重ボタンでしょうか・・


そんな研ぎ傷です



そして今回届いた赤沢産仕上砥
これはTさんが研ぎ面を仕上げて下さっていたので
たいへん助かりました
戸前層でしょうか・・美しい黄板です
まろやかな研ぎ感で心地よく研ぐことができます
若狭砥を採掘している尚さんによると
若狭・中井産と同様合成りの砥石層だということです
その戸前ということでいいのでしょうね


三河名倉砥の傷が1分ほどで消えました


しかも地鉄、鋼ともほとんど鏡面に研ぎ上がります
これには驚きました
この研ぎ感と研ぎ上がりは
以前、尚さんが採掘されていた福井県中井産の
硬口の仕上砥に似た印象を受けます(参照


刃先の拡大画像(約180倍)



次に大判の原石を一部面出しを行い、研いでみました
上のものよりも硬めですが
これも滑らかな研ぎ感です


さらに緻密に研ぎ上がりました
これも1分ほど研いだ状態




文句なしの研ぎ上がりです
関東にもこのような優れた仕上砥があったのですね・・


2015年4月1日水曜日

ネズミ男・・? そして鑿・ノミいろいろ

今朝 近くの河原で拾った石
中央の茶色の模様はネズミ男にしか見えない



こちらは、刃物産地である兵庫県三木市にある
内藤商店から届いたもので
三種類の三分追入ノミ
どれもかなり古いものだそうです


銘は左から春峰、鶴菊で内藤商店の問屋銘ということです
右端は大内銘で先代によって鍛えられたものだそうです

大雑把な研ぎ上がり状態ですが
裏研ぎを含め20分ほどで三本を研ぎ上げたのでご勘弁を・・
とりあえず切れるようには研ぎました




鋼はどれも炭素鋼です


刃角度は上から春峰銘・約27度、鶴菊銘・約29度、大内銘・約30度
刃角度が違っていても
それぞれの切れ味はよく分かるのがおもしろい


仕事で使ってみました
この作業は特に刃物の切れが要求されます
これは刃角度27度の春峰
ここでは裏を当てて削っていますが
鎬面を当てて削るには
これくらいの角度が使い易い


これは刃角度29度の鶴菊銘
このように鎬面を当てた削りではもっと低い方が使い易い
この部分は左手を使っていますが
私は本来左利きなので問題なく行えます


大内銘のもので、刃角度は30度ありますが
切れが軽く大変使い易い
これは充分仕事で使えます

ただ、鋼の鍛接の状態を見たら買わないと思う・・
切れれば問題ないことなのですが
選ぶ段階では切れのことまで分からないので
鋼の鍛接の様子など見栄えが悪かったら
どうしても避けてしまうのですね・・



これは手許にある小山金属製の
いつもは上の作業は右端の三分(9mm幅)の
追入ノミを使うのです


今回、上の3丁の追入ノミと使い比べてみましたが
やはりハイブリッド全鋼のものが
最も切れが軽く、使い易いのです
これには驚いてしまいました・・

さらに付け加えますと
上の内藤商店の問屋銘である
春峰銘と鶴菊銘は小山金属製なのでそうです
ということは、小山金属の刃物製造技術は
確実に進歩していると言えるのではないでしょうか

小山金属は量産メーカーとなっているようですが
量産体制でここまで優れたものを作り上げることができる
というのは、現代技術の優れた部分と言えるのでは・・
鋸は完全にそうなっています


因みに、バイディングを入れるための横板の削り取りには
このフィッシュテール・ノミ(15mm幅)を使っています


これも手頃な価格のものですが、よく切れます
やや研ぎにくいのが難ですが・・