古い鉋身を手に入れました
身幅5.7cm
刻印銘がありますが判然としません
二字めは房と思われます
ひどい錆でしたが
なんとか使えそうです
古い鉋身によく見られる
薄い造り込みです
研ぎ易く、しかも鋼(はがね)には
強靭さを感じます
刃先を拡大してみると
微細な刃こぼれが確認できます
玉鋼特有の状態です
焼き戻しでうまく直って
くれるでしょうか・・
地鉄(じがね)は細緻でたいへん美しく
幕末・新々刀期の刀を見ているようです
仔細に観察すると微細な柾目のようで
地沸(じにえ)がキラキラと細かく輝いています
和鉄独特の景色です
現代の鉋ではほとんど見られません
拡大しても美しさが伝わってきます
小刀2点の成形を終えました
右は片切刃、左は平造り
どちらも刃角度は約25度
焼き入れはまだまだ先になりそうです
これは鋼材から切り出したところ
焼き戻しをしてみました
温度は約180度で1時間
前回研いだ際には最初に
赤浄教寺(じょうけんじ)砥
粒度約800を使いましたが
今回は沼田・虎砥(粒度約800)に
してみました
以下の使用砥石は同じです
これは小鳥(おどり)砥
粒度約1200
そして中研ぎの最終段階として
三河白名倉(粒度約2000)
この砥石は小さなものですが
力のあるすばらしいものです
小さくても寸八鉋身も研ぐことができます
このような三河名倉砥の大判には
もうお目にかかれなくなってしまいました
ここからは仕上げ研ぎ
中砥の傷を早く消すため
最初に粗めのものを使いました
この砥石は京都梅ヶ畑・中世中山産
そして同じく梅ヶ畑・尾崎産の合砥
最後に梅ヶ畑・奥殿(おくど)産の
合砥で鏡面仕上げを行いました
焼き戻しをしても、研いだ感じに
まだまだ強靭さを感じます
刃先が精緻になり
刃こぼれも無くなっています
これは焼き戻しをする前の状態
メープルを削ってみましたが
削り肌が滑らかになりました
これは焼き戻しをする前の削り痕
30年ほど寝かせた
ヨーロッパ・スプルースも
問題なく削り上げることができました
その後、スパニッシュ・セダーなど
荒い削りを行ってみましたが
刃先はまだまだ大丈夫です
これで仕事で使えそうです
重道・寸四鉋の古い台を補修し
身を収めてみました
カール杢のメープルを削ってみたが
手応えが重い・・
一枚刃の鉋でここまで重いと
ちょっと辛いかな・・
削り屑の艶もあまりない感じ・・
逆目は止まっているが
削り肌が荒れていて、刃のこぼれもある
拡大してみると
刃先がやや荒く、刃こぼれも確認できる
玉鋼によく見られるものですね・・
研ぎ方が悪いのかもしれないので
別の砥石で研ぎ直してみることにします
雑味の少ない中継ぎ用仕上砥二種と
鏡面仕上砥で丁寧に研ぎ上げてみました
大きな刃こぼれは無くなりましたが
まだこぼれていますね
研いだ感じも焼きが入り過ぎているような
印象を受けます
裏が出し難かったのもそれが原因か・・
これは焼き戻しをする必要があるかもしれません
寸四・鉋身(身幅約6cm)を手に入れました
錆をおおまかに落とし
裏を仕上げましたが
裏出しはなかなか困難で
これが限界でした
鋼(はがね)は炭素鋼系で
地鉄(じがね)には混ぜ鉄が確認できます
画像右側の鋼との境目付近の
黒く見えているところが混ぜ鉄で
よく見ると、これは左端から
1cmほどのところまで伸びています
古い台(一枚刃)も付いていて
いま補修しているところです
出来上がったらまた報告します
四代まであるようですが
これは何代目のものなのでしょうか
ご存じの方はご教示お願いいたします
会津の刃物鍛冶は
刀鍛冶の流れを引く重房(江戸時代末)から
重道~重延と続いたということですが
昭和の時代の終焉とともに
終わりを告げたようです
毎日新聞社刊「新・道具曼荼羅」から部分転載