2017年3月21日火曜日

古い長台鉋を入手 昔のHSSハイス鋼 

古い寸八・長台鉋(身幅72mm)をゲット
砥ぎ上げて台を修正し、さっそく仕事で使ってみた
銘は「浪花Naniwa 淩作Ryosaku」か・・
銘の左下の刻印は判読できない

身の背にHigh speed steelの刻印が打たれているので
ハイス鋼が使われていると思われますが
裏出しは何とか可能で、研ぎ上がりは
現在のハイス鋼とはずいぶん違った印象を受けます

強靭なハイス鋼なので
荒研ぎと中砥ぎには人造砥を使用
使ったのは以前紹介した
シャプトンの「刃の黒幕」シリーズから
grit320→ grit1000→ grit1500
そして中砥ぎの最後に、硬口の備水砥を
目起こしをして砥汁を残したまま使いました

仕上砥ぎに使ったのは
さゞれ銘砥さんからお世話になった
この梅ヶ畑産天井巣板
この天然仕上砥は現代製のハイス鋼には
よく反応するが、この鉋では反応が鈍い
そういうことなので、目起こしをして
砥汁を残したまま研ぎ上げました

鋼の砥ぎ上がりは現代のハイス鋼とはかなり違い
ピカリと光る程度に砥ぎ上がる
これは東郷鋼の犬首に似ている感じですね・・
できるだけ切れが軽くなるように
刃角度は約26度で砥ぎ上げてみました

刃先の拡大画像(約100倍)。
取りきれていない返りが
粘り付いているのが確認できます

台の表面を削って汚れを除去した状態
材は赤樫か・・

下端Shitabaがほとんど狂っていないのには驚かされた

台の修正を終え、刃物椿を染み込ませた状態

出来上がり



刃口がやや広すぎるが
何とかセーフ

製作に取りかかった平家琵琶の腹板(表板)を削ってみました
材は大阪の橘商店からお世話になった見事な杢のタモ材


堅めの材質で強烈な逆目が交じっていることもあり
切れはやや重く感じるが、削り肌に問題はなく
やや荒めの削りでも逆目はほぼ止まっている

タモ材の片面を仕上げた後の刃先の状態
やや白く磨耗しているがまだまだ切れる
カチリとした材質のタモ材を削っても
この状態なので、刃先はかなり強靭で
永切れも期待できそうです

2017年3月20日月曜日

金属切断用鋸 そして牛骨のオイル浸け

ここのところ真鍮板をカットすることが多いので
このような鋸を手に入れてみました

銅やアルミにも対応しているので
真鍮にも使えるかな・・と期待したのですが

5cmほど切り進んだ時点で
全く切れなくなりました

刃先が完全にやられています

刃を替えて、こんどは牛骨を試してみました

これは問題なくカット

挽き幅は1mmない程度

こちらは従来の金切り鋸で真鍮板を挽いたもの
これよりは挽き幅は狭いのですが
牛骨を挽いた切り込みの速度は
やはりこちらの方が速い

真鍮板をカットするには金切り鋸でも
ステンレス用でなければ対応できない

それから、鋸刃のアサリが狭いので
薄い牛骨は挽きにくいのが残念 

試し挽きをした牛骨はオイル浸けに


オイルはボイル処理し硬化促進剤が添加された
リンシード・オイル(亜麻仁油)

出来上がったら、このように
糸巻きのツマミを作ったり・・と
いろいろと役に立つ

ボイル処理された亜麻仁油は乾燥後黄変する
これは以前作ったもので
ギター用のナットとサドル
冬場半年浸けておき、夏場の半年乾燥させたもの
完全に乾くと瞬間接着剤でしっかりと接着もできる
脇に置いてあるテストピースは1994年のもの
まだしっかりと接着されている

2017年3月16日木曜日

篠山の木工職人が使っていた鉋

先日紹介した丹波篠山自然塾の
大塚さんからお借りしていた天然砥石を返すため
大塚さんのお宅に伺いました
大塚さんは木工も本格的になされていて
轆轤Rokuroの設備まで自作されているのには驚き
漆塗りの作品を頂戴しました
感謝
5年ほど前に製材したという漆の木の端材も頂いた
漆材はまだ削ったことがないので楽しみ・・

また、篠山の木工職人が使っていた古い鉋を
しばらく使わせてもらえることにもなりました
使い込まれて身がかなり短くなっているので
気に入って使われてきたものと思われます
たいへん興味が湧きます

銘は「高砂Takasago」
寸六(身幅65mm)の一枚刃鉋
ラベルに「木口Koguchi一枚鉋」と書かれてあります
木口削り専用として使われていたのでしょうか・・
この銘についてご存知の方は
ぜひご教示願います
グラインダーをかけると
炭素鋼系の火花が飛びました




台はいい風合いに変色していて、風格を感じます
ほとんど狂っていないのには驚かされます


かなり使い込まれ
鋼Hagane部分は残りわずかです



刃先は理想的なアールが付けられています
裏出しの具合や砥ぎ上がりの状態を見ても
かなりの腕の職人さんだったものと想像されます 

刃角度は24度以下
昔の鉋はこのような刃角度のものが多いですね

研ぎ直すに当って
まず裏出しを行いました

裏出しは比較的容易ですが
あまり無理をしないように心がけました

一枚刃鉋で、身も短くなっているので
裏押しは行わず
この画像の砥石を使って砥ぎ上げました

これは硬口の天然中砥
群馬県産砥沢・虎砥を目起こしをし
砥汁を残したまま研いだ状態

裏からの刃先の返りが顕著です

これは仕上砥、大平産戸前で研いだ状態

まだ刃先の返りが残っています
かなり粘りのある鋼で
焼き入れも甘めなのでしょうか・・

その後、これらの砥石を使って砥ぎ上げました
下段左から、荒砥ぎに使った人造砥
シャプトン「刃の黒幕」grit320
その右の黄色いものは同じく「刃の黒幕」grit1000
そして「刃の黒幕」grit1500
右から2番目は天然砥石の硬口・備水砥
そして右端は仕上砥ぎに使った若狭砥(田村山産)

若狭砥で砥ぎ上げた状態
やはり甘めの焼きが入っているためか
砥ぎは容易で、ここまで楽に研ぐことができました

刃角度が24度と低いので
刃先部分を蛤Hamaguri刃に砥ぎ
先端部分だけ26度ほどに砥ぎ上げました

地鉄Jiganeは縞状の模様があり美しい
地沸Jinie風の金属組織も確認できる
さらに緻密に砥ぎ上げるともっと美しくなると思う

刃先の状態は文句なしです
(約100倍の拡大画像)

さっそく試し削りを・・
頂いた漆材を削ってみました
YouTube動画参照下さい

動画撮影後の状態

材は中庸の堅さでやや粘りがありますが
心地よく削ることができます

削り肌も美しい

もう一枚の端材も削ってみました

刃先はほとんど変化なし
永切れが期待できます