2015年1月22日木曜日

ハイス全鋼小刀と優れた安価な小刀

これは数日前の作業ですが
本黒檀の木口を削るには
やはりハイス鋼の小刀が威力を発揮してくれます






膠(ニカワ)接着


この後、ネックを削りますが


1年ほど前に紹介した安価な小刀のもう1本を
刃先先端からの刃渡り角度を修正して研ぎ上げてみました


銘は玉龍




鋼は安来ハガネ青紙と思われますが
試し削りをしてみると、以前紹介したものよりも切れが軽く
コントロール性も充分です


ということなので
柄に挿げることにしました








プラネットカラーでオイルフィニッシュ



次の日(今日)、さっそく仕事で使ってみました


ここ、というときの微妙な削りにも対応してくれます


ウォルナット材も問題なく削ることができます


これは以前から使っている細身の小刀(無銘)
切れはあまり良くないが
この形状のものはこれしかないので
仕方なく使っている
それほど頻繁には使わないので、ま、いいでしょう

安価な小刀がよく切れたり
高価な小刀が切れなかったり
刃物というのは不思議です・・




2015年1月19日月曜日

中世たたら実験操業の様子 新見の銑押し製鉄

岡山県新見市で毎年行われている
中世たたら実験操業で、昨年2014年
操業以来8年目にして銑鉄の生成に成功したということです
関係者の仲田芳人様から画像の提供を頂きましたので
その様子をお伝えしたいと思います

以下は仲田芳人様による報告文から引用したものです

新見市は中世の時代、京都・東寺の荘園として栄え
新見荘の年貢は鉄、和紙、漆などでした
25年前から中世の歴史を生かしたまちづくりを進めていて
その一環として「中世たたら製鉄」の再現操業が
2006年から市内正田の操業施設で行われています


今年2014年の操業は10月25、26日に行われました
縦横1m×1.7m、高さ1.25mの中世の炉を築き
夕方6時から翌日の午後3時半まで昼夜操業しました




今回の操業で使った砂鉄は765.8kg、木炭1153kg
出来た銑鉄(ずく)は約400kgと推定されています


4台の手押しふいごは、市内外の300人が交代で
「押して、引いて」の掛け声に合わせて押し、炉に風を送り続けました
新見の「たたら」製鉄は、「ずく押し」と呼ばれる銑鉄(鋳物鉄)造りです
「ずく押し」は明治時代半ば以降途絶えていた技術ですが
ついに今回、「ずく押し」を日本で初めて成功させ、快挙を達成しました




中世の炉を再現しての操業は全国でも例がありません
全国各地の企業、大学、研究者、一般の方々等
たくさんの人が操業を支え、活気があふれています










26日午前10時ごろ、炉底部のノロを取り除くと


ドロドロと「流れ銑(ずく)」が流れ出した
まるでおろちのようにも見え、感動的な瞬間でした












16年前から新見の「たた」らを指導されてきた
国選定保存技術保持者の木原明さん(奥出雲町)は
「炉の構造と砂鉄の配合を変え、8年間の試行錯誤の成果
炉はまだ元気で100%大成功」 と話されました

昔の会津刃物産地(福島県)では所によっては
自家用の小精錬所で銑(ずく)を吹いていたということが
堤章氏の著書 「会津の刃物鍛冶」では説明されていますが
今回備中新見(岡山県)で出来た銑で
どのような刃物が作られるのか興味が湧くところであります


2015年1月14日水曜日

昔の職人さんが使っていた会津刃物 重輝銘 櫛刃鉋を入手

昔の職人さんが使っていた会津鉋を入手

身幅42mmほどの一枚刃ですが

刃先が櫛刃になっています

櫛刃鉋は西洋独特のものと
思っていましたが
日本にもあったのか、と
ちょっと驚きました
手工道具全盛期の道具カタログにも
櫛刃鉋は載っていないので
おそらく特注で誂えられたものと
思われます

櫛刃鉋は杢の深いメープルや
堅木削りで主に使われたものと
思われますが
西洋ではヴァイオリン製作で有名な
ストラディバリも使っていたようです
また、19世紀ギターにも裏板や横板の
内側に櫛刃の削り痕が残っているものを
よく目にします
ですから西洋ではかなり古くから
この鉋が使われたようです


とりあえず研ぎ上げてみました

堅木削りにも使われるので
鋼は東郷鋼かな・・
と思っていましたが玉鋼でした
これにもちょっと驚きました

研ぎ角度は刃先から1mmほどを
約29度に研ぎ直しました

刃口も広すぎる状態なので

補修


さっそく試し削りをやってみました

削った板は深い杢のメープル材
荒削りをやってみましたが
切れは通常の刃先よりも軽い感じはあり
一枚刃でも逆目はほぼ止まっています


台は白樫ですが、どういう訳か
黒く塗られています
水には溶解しないので墨ではなく
ステインのようなものが
染み込ませてある感じです

櫛刃の削り痕は通常は
スクレーパーで削り落とすようですが
普通の寸八鉋で削ってみました
せっかく荒削りで会津鉋の
重輝を使ったので
仕上げ削りは重正銘(鋼は玉鋼)を
使ってみました

艶のある美しい削り肌で
逆目もきれいに止まっています
このように平面を削る場合は
スクレーパーで苦労して削るよりは
通常の仕上げ鉋を使った方が
かなり楽ですが
ヴァイオリンなど曲面削りには
スクレーパーが向いているでしょう

試みに木口を荒削りしてみましたが
なかなか具合がよい感じです



試し削り後の刃先の状態
ほとんど変化はありません
当面、木口の荒削り用として使ってみようと思います

他の会津鉋はこちらでまとめて紹介しています
参照下さい