2014年8月7日木曜日

ありがとう 有難い 忝い 辱い

「ありがとう」とはいつ頃から言われているのか
ちょっと気になったので
手許の古文をちょっと調べてみました
古語辞典では「有難し」は本来は「めったにない」
「まれである」という意味だが近世(江戸時代以降?)
「ありがたい」という感謝の念を表すようになったと
説明されています
ということは江戸時代までは感謝の念を表す言葉は
「忝いかたじけない」「辱いかたじけない
ということになりますが・・・
まず平安時代中頃とされる源氏物語から
「かたじけなく」


同じく源氏物語から「かたじけなうのう


同じく「かたじけなき」
これらの登場人物の科白せりふを見ると
どれもへりくだった言い方ですね


次は時代がかなり下って松尾芭蕉の手紙から
「忝くかたじけなく
延宝九年は1681年、江戸時代初期


同じく松尾芭蕉の手紙から
「辱くかたじけなく
天和二年は1682年、江戸時代初期


これは柳沢吉保の日記(楽只堂年録
元禄十年(1697年)十一月




元禄十二年(1699年)五月の日記では
「かたじけない」と「有りがたい」の両方が使われています
この頃はその時の気分で使い分けていたのでしょうか・・


これは江戸時代初期~中期
井原西鶴の「世間胸算用」から「有がたき」
刊行されたのは元禄五年(1692年)、舞台は大阪


これは江戸時代後期、文化五年(1808年)に江戸で発行された
版本(読本)「由里稚野居鷹ゆりわか のずえのたか」(参照
から「有がたさ」


これは明治時代
夏目漱石の小説「行人」から「有難うありがとう


幸田露伴の「五重塔」から「有難うござりまする」
昭和2年(1927年)初版発行

広辞苑では「ありがとう(有り難う)」 は
アリガタクの音便、下の「ございます」 「存じます」の略された形
感謝の意をあらわす挨拶語 と説明されています

ということは、露伴の「有難うござりまする」は
本来の使い方となり、漱石の使い方は
いかにも漱石らしい口語体と言えますか・・


2 件のコメント:

源 信正 さんのコメント...

ありがとう は、ポルトガル語でオブリガーゴといい、それが変形して と言う説もあります。江戸時代に外国との窓口は長崎です。
長崎弁ではオオキニと言うので、洒落者の長崎の人たちが使い始めたのではなかろうか 等と創造の翼を広げています。
ところでキヨンドさんの家が川のそばなので台風11号の影響を心配しています。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

台風一過・・
幸いこちらは被害はありませんでした。

なるほどオブリガーゴが転訛ですか・・
いろいろ説があるのですね・・
福岡でも祖母は「おおきに」と言っていました。
上方も「おおきに」だと思うのですが
ブログで紹介した西鶴は上方ですが
世間胸算用では「ありがたい」となっているのが不思議といえば不思議です・・
「おおきに」は口語体として扱われているのですかね・・
広辞苑では「おおきに(大きに)」は室町時代以後の語と説明されていて、
関西地方で使われる「おおきに」は
「おおきにありがとう」の略としています・・