2024年5月10日金曜日

森鴎外 松本清張

 


松本清張の短編小説に
「或る小倉日記伝」
というのがある
若い頃から時折読み返してきたが
ここ数日ちょっと掘り下げて
この小説を楽しんでいる
朝井まかてさんの小説「類」
には「或る小倉日記伝」も
話題に上っていて
「類」は森鴎外の末子の名で
鷗外の死後紛失していた
鷗外の小倉赴任時代3年間の
日記の発見者としても知られている
そのあたりのことを
まかてさんの小説では
清張の「或る小倉日記伝」の
内容と実際のことを比較して
森類に回想させている

「或る小倉日記伝」は
紛失していた鷗外の小倉時代の
日記に代わる記録を
主人公の田上耕作が
作り上げようとする奮闘記
とも言えるが
田上耕作は実在の人物で
志したことも実際のことらしいが
この記録は紛失していて
現在では目にすることが叶わない

森鷗外の小倉日記は
先に述べたように昭和23年に
類によって発見され
妻の美穂が浄書し
3年後の昭和26年に
世に発表されている
「或る小倉日記伝」では
その前年に田上耕作が死亡し
小倉日記が発見されたことを
知らずにこの世を去ったのは
本人にとって良かったのか
悪かったのか・・
として終わっている
ところが実際は田上耕作は
戦争中の昭和20年に
空襲で亡くなっている

このあたりのことを
朝日まかてさんは
小説の脚色としての
松本清張の手腕を類に感心させ
本来ならば小説家でもあった
自分が書くべき小説であったと
悔しがらせている
また、皮肉なことに
松本清張は「或る小倉日記伝」で
芥川賞を受賞しているが
類は芥川賞候補になるか
というところまでは行ったが
結局叶わなかった
事実は小説よりも奇なり

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田上耕作氏


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