2023年3月12日日曜日

匠家必用記下巻 14、15章の 読み下しを紹介

匠家必用記下巻から
14、15章の
読み下しを紹介
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十四 寺建立心得の事
寺を造らんと願ば、地鎮の祭並柱祭の神事におよばず造立すべし。寺は汚穢不浄の場所なれば地鎮祭並棟上のとき、番匠として職神を祭ことなり難し。且は寺へ酒肴等を入れ事も本意ならず。此時は寺の外清浄の地をえらみて棟上の行粧(よそほい)をすべし。棟上の神事、前のごとく御供とは別火を用べし。神事終て


後、其地を引はらひ寺へ入、棟をあぐべし。寺よりいかほど頼とも寺にて棟上の神事執行(とりおこなう)べからず。職神へ対しはばかるべきこと也。其地汚穢不浄なきにおいては棟上の神事執行ともくるしからず。神宮寺並祈祷寺等の不浄なき寺は棟上の神事常のごとし。然どもときのよろしきにしたがひて可也。その外、民家たりともけがれ(汚穢)ふしやう(不浄)の地にをひて祖神を祭ることなり難し者也。よく考て棟上の執行べし。


十五 唐尺の弁
俗間に門を建立するに唐尺の銘、財・病・離・義・官・劫・害・吉との寸を用、是則北斗七星を象り此よき寸にあたる所を以て門の間をきわむ。若此ことをしらずして造り、其あし寸に当ときわ、かならずわざはい起る。家繁昌せずといふ。又曰、宅の側に木をうへる、その木の品に因て(よって)人の禍福(くはふく)有といふ。因ておもふに禍福有て唐尺より出たるにあらず。天命と又人の慎、不慎にあり。なんぞ寸尺或は植樹によって人の吉凶あらんや。仮令(たとい)右のよ



き寸法に合門を建ると。ふつつしみの人は禍かならず遠かるまじ。ましてや此唐尺起りは唐土の卜者の徒あ妄言にして、居家必用にも是を出せり。日本にも好事者是をよき事とし、或は唐尺の寸に八卦をそへ、方角をえらみて日取とき(時)取などとわけもなきことをいひののしれり。近世大匠雛形にも是を添て印行せり。人を惑すのはなはだしき也。只其地のよろしきにしたがひ門を建立して少しも災なし。又俗間に鬼門金神を大に忌をそるる事あり。是其根元をしらざる故に災起るもの也。くわしくは広益俗説説弁、本朝俚諺(りげん)を見て発明すべし。

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