土佐(高知県)の刃物鍛冶
天水Takamiさんの新作小刀が2本届きました
画像右の2本
左端はいま主力で使っているもので
鋼Haganeは安来鋼・白紙1号
中央の、添え銘に「緑紙」と切られているのは
安来(ヤスキ)鋼の緑紙という鋼が
使われているそうです
岩崎航介著「刃物の見方」では
緑紙4号と5号が紹介されていますが
4号が炭素分0.7%~0.8%
5号は炭素分0.6%~0.7%となっています
今回の試作品はどちらか分からないということですが
0.7%としても白紙1号の約半分の炭素量ということになります
切れ味軽いです
これまで経験した天水さんの小刀のなかでは
トップクラスですね
さっそく仕事で使ってみました
削っているのはやや堅めの桑材の木口
桑材の木口は堅く、粘りも強いので
小刀の試し削りには向いているかもしれません
この小刀は上の画像右端のもので
添え銘に「積鋼」と刻まれています
天水さんによると6種類の鋼Haganeを
積層にした鋼だということです
切れは緑紙に比べるとやや重さを感じます
ですが、これまで使ってきた天水さんの小刀と
比べると、かなり優れていると感じます
そしてヤスキ鋼・緑紙が使われたもの
サクサクと軽く削ることができ
コントロール性も優れています
このレベルでしたら文句なしです
これは主力で使っている
ヤスキ鋼白紙1号が使われたもの
上の積層鋼とよく似た印象を受けます
小刀は現在の市販品には切れの軽いものが少ないのですが
昔の刀などを小刀として使ったりすると
時々驚くように軽い切れのものがあるのですね
しかも刃先の持ちもいい
日本刀の多くは折り返し鍛錬されているので
炭素分は少ないものが多い(0.5%前後)のも一因かな
と思われます・・
参考までに
これは宮大工の故・西岡常一氏が
「法隆寺を支えた木」という著書のなかで
述べておられる箇所ですが
初めて作ってもらった槍鉋・ヤリガンナがよく切れず
その後、法隆寺に使われていた和釘と
日本カミソリの鋼(おそらく玉鋼と思われます)を
使って作ったものでうまくいった
と、いうことが書かれてあります
このときにヤリガンナを鍛えたのが刀匠だった
というのが興味深いところで
和釘と玉鋼を使って刀を鍛えるということは
古来から行われているようで
江戸時代初めの刀工、長曽禰虎徹も
兜や古釘など、古い鉄を溶かして刀を作り
そのことを自分の銘にして古鉄入道と
名乗っていたとされています
また現代でも和釘など古い鉄は
刀工に好んで使われているようで
このようなYouTube動画もあります
動画で刀を鍛錬しているのは故人となられた
杉田義昭氏です
氏は通常の焼き入れとは違ったやり方で刃文を出す
独創的な刀匠でした
また、手持ちの小刀のなかで切れ味が良いのは
すべて刀匠が鍛えたもの
というのも興味深いところです
これも参考として
古代の和釘とその他の鉄の成分分析表で
Cが炭素分、Si・ケイ素、Mn・マンガン、P・燐(リン)
S・硫黄(イオウ)、Ti・チタン、Ni・ニッケル、Cu・銅です
こちらは古墳時代の直刀の成分分析表
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