2013年5月1日水曜日

千代鶴是秀作か?藤四郎銘組鑿と国弘銘鉋


兵庫県三木市の通称・井上神社から
明治時代から昭和の初め頃に活躍した刃物鍛冶名人
千代鶴是秀作と思われる10本組の追入鑿Nomi
銘は藤四郎

左勝廣銘のコテ鑿(参照下さい)
それに加え千代鶴是秀の先輩格にあたる
国弘銘の鉋2丁を預かってきました
この組鑿は5年ほど前にこちらのHPで
紹介したことがありますが(砥石はこちらで紹介しています)
兵庫県三木市に古くから存在していた日原大工という職能集団があり
その棟梁をやっていた大工職人の道具一式が井上神社に収まったのです

かなり使い込んだ形跡がありますが
先日これを見た数寄屋大工の国分氏は
一様に研ぎ減っているのが興味深いと言っていました
おそらく組鑿をいくつか持っていて
頻繁に使う鑿は他のものを使っていたのではないかと推察していました
このことは、国分氏が後日この組鑿を
宮大工で有名な西岡常一氏の唯一の弟子である
小川三夫氏に見てもらった際にも
同じことを口にされていたそうです



藤四郎という刻印銘が確認できます
これが真作だとしたら、千代鶴是秀作の鑿が
このように組になって揃っているのは
貴重ではないでしょうか

柄はグミの木


こちらは日原大工の棟梁の
道具箱の一つに収まっていたもので
国弘銘の鉋2丁です
手前は寸三小鉋(身幅54mm)
奥は寸六の長台(身幅67mm)



通称、天国弘と呼ばれているもので
刻印の銘振りが違っています
右の寸四身には重ね鷹羽の刻印が打たれています
国弘鉋には偽物が多いということなのですが
さてこれはどうなのでしょうか・・
四代目の作ではないか・・という意見も頂きました

これら紹介した藤四郎銘の組鑿と国弘鉋2丁
そして左勝廣のコテ鑿を
私が研ぐという大役を仰せ付かったわけですが
果たしていかに・・・



鉋身の背を受ける台の馴染(なじみ)
紙が挟んである状態なので
この部分も補修をしようと思います

研ぎの手始めとして
まずグラインダーで火花を出してみました
動画参照ください
こういったことはなかなか機会を得ることができないので
貴重な資料となるのではないでしょうか

これは藤四郎銘一寸二分(刃幅約36mm)の追入鑿
炭素鋼系の火花が出ています

これは国弘銘寸四(身幅約54mm)鉋身

そして国弘銘寸六(身幅約67mm)の鉋身

火花から判断して3点とも炭素鋼が使われているものと思われます
ということは、千代鶴是秀作のノミの鋼は
スウェーデン鋼ということになるのでしょうか・・
興味深いところです・・

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

動画を拝見していてふとこの記事を見ました(^^)
初代千代鶴の使っていた鋼はエドガレン鋼というものだったと聞いた事が有ります。スエーデン鋼かもしくはイギリスの鋼だそうです。

楽器製作家 田中清人 さんのコメント...

コメントありがとうございます。
千代鶴是秀が使っていた鋼については
実際に会って話を聞いた人が書いたもの
(白崎秀雄氏、加藤俊男氏、岩崎航介氏、
天田昭次氏)では、
イギリスのワーランデッド・スチール社や
トーマス社の鋼。
あるいは明治30年頃のスウェーデン鋼
という話と大正時代頃の鋼。
という話が錯綜している感じで
このスウェーデンの鋼というのが
エドガレン社のようですね・・
千代鶴是秀もいろいろと試していたのだと思われます。